2020年度から始まる中期経営計画は、2019年5月に策定した「2040年JX金属グループ長期ビジョン」で掲げる「技術立脚型企業への転身」を見据えた種まきをする3ヵ年と位置付け、新たな成長領域への取り組みを加速しています。それぞれの事業特性に応じた施策や人材開発、組織風土づくりなどを推進し、「自律性」「機動性」「独立性」をより高めた企業運営を実行していきます。
「装置産業型企業」から「技術立脚型企業」へ転身し、
激化する国際競争の中にあっても高収益体質を実現するとともに、
SDGsで目指す持続可能な社会の実現に貢献する
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2020年度における世界経済は、期初には新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、急速に悪化しましたが、期中において、各国の経済下支え策や経済活動の段階的な再開を受け、持ち直しの動きが見られました。しかし、下期には再び、同感染症の影響が拡大し、本格的な回復には至りませんでした。
銅価格は、同感染拡大の影響による需要後退の懸念から一時下落しましたが、その後、中国で銅地金需要が回復した一方、南米の銅鉱山からの供給量が減少したため、期初の1ポンド当たり216セントから、期末には1ポンド当たり401セントまで上昇しました。
このような事業環境のもと、当社グループは感染拡大防止策を徹底して事業活動を継続しました。カセロネス銅鉱山においても、感染拡大防止策を実施し操業を継続しましたが、採掘に遅れが生じたため、生産量が前年に比べて減少しました。一方、機能材料事業および薄膜材料事業の各製品の販売量は、テレワークの浸透等によるスマートフォン、サーバー、通信インフラをはじめとする高機能 IT分野での需要増加を主因に、概ね前期を上回りました。
その結果、当期の営業利益は、カセロネス銅鉱山における生産減の影響があったものの、銅価格の上昇と機能材料・薄膜材料の増販等により、781億円となりました。
売上高
営業利益
※ 在庫影響を含む。
税引前利益
親会社株主に帰属する当期利益
総資産・総負債
社会トレンドが大きく変容する中、当社グループは従来通りのビジネスモデルを続けることに対する危機感から長期ビジョンを策定し、「技術立脚型企業」への転身を目指して舵を切りました。特に2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響による産業構造の変化、SDGsやESG経営への機運の高まり、カーボンニュートラルに向けた社会的要請の動きが加速し、当社グループを取り巻く環境は一層ドラスティックに変化しています。このような社会の変化を的確に捉え、抜本的な組織文化の変革を目指します。
長期ビジョン策定時
先端素材に対するニーズの拡大 | IT、モビリティに加えて、ヘルスケア、エネルギー、建築などさまざまな産業でデジタルデータの活用が進展し、当該分野に用いられる先端素材のニーズがさらに拡大 |
国内市場の縮小/新興国を中心に持続可能な成長が課題に | 少子高齢化・産業空洞化などにより国内市場は縮小。経済成長の中心はアジアなど新興国にシフトするが、新興国でも顕在化し始めている環境問題への対応が課題 |
中間層拡大による資源不足・枯渇の深刻化 | 中間層の増加に伴い、消費される資源量も増加。良質・安価な資源は獲得競争の対象となり、資源不足・枯渇や地域的な偏在が深刻化 |
現在
先端素材に対するニーズの拡大 |
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気候変動対応の世界的な加速 |
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資源不足・枯渇の深刻化 |
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今回中計の策定時、営業利益目標を3ヵ年累計で1,700億円としていましたが、上記のような事業環境を背景に、フォーカス事業、ベース事業ともに増益を見込んでいます。フォーカス事業では、旺盛な需要伸長に伴う増販により、中計策定時目標から150億円上積みしました。ベース事業では、銅価上昇と新型コロナウイルス感染拡大の影響を除くと、中計策定時計画を上回る収益を予想しています。こうした見通しのもと、引き続き全社を挙げて収益ならびに財務基盤の確立に取り組みます。また、ESGに関連する指標も重要な経営指標として取り組みを推進していきます。
営業利益
2020年度実績 | 2021年度見通し | 2020-2022 3ヵ年累計 | ||
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フォーカス事業 | 機能材料事業・薄膜材料事業他 | 311 | 360 | 1,150 |
ベース事業 | 資源事業 | 349 | 320 | 1,870 |
金属・リサイクル事業 | 273 | 180 | ||
事業共通費用 | ▲152 | ▲260 | ▲520 | |
合計 | 781 | 600 | 2,500 |
※ 2021年度見通しおよび3ヵ年累計見通しは、2021年5月時点のものです。
2020~2022年度中計では、先端素材の開発などに向け、3ヵ年で3,000億円を投資するとしています。そのうち1,600億円を設備能力の増強、新素材の開発やレアメタルの鉱山権益の探索など、将来の成長に向けた戦略投資に振り向けます。また、新たに200億円のESG投資枠を再定義し、脱炭素や資源循環などのESG活動の活性化を図ります。
投資計画3ヵ年累計 3,000億円
フォーカス事業 |
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ベース事業 |
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技術開発 |
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ESG経営 |
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人材育成 |
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