銅精鉱とリサイクル原料から、製錬プロセスを通じて銅・貴金属など高品質の金属地金を効率的に生産し、日本国内とアジア地域へ安定的に供給しており、昨今、特にリサイクル原料の処理量を増加することで、持続可能な資源循環型社会の構築に貢献しています。また、製錬で培った焼却・溶融技術を応用した産業廃棄物の無害化処理事業は、埋め立て処理を必要とする二次廃棄物を発生させないという「ゼロエミッション」を特徴とし、我が国の環境汚染防止にも貢献しています。
JX金属(株)
取締役常務執行役員 金属・リサイクル事業部長 技術本部副本部長
安田 豊
新体制による事業運営については2020年4月に、JX金属製錬(株)佐賀関製錬所を共通の事業基盤としている金属事業とリサイクル事業の一体運営を実現するべく、「金属・リサイクル事業部」を発足し、マージンの拡大、コストダウンおよび操業の安定化に一体となって取り組みました。
金属事業では、特に年度前半において新型コロナウイルス感染拡大の影響を主因に硫酸の国際販売価格が大きく下落しました。また、原料銅精鉱需給のひっ迫により、銅精鉱の購入条件は一貫して悪化の一途を辿りました。そうした中、高マージン原料の増集荷やコスト削減など、収益改善のための施策を講じました。年度後半においては各国金融緩和政策の影響や中国経済の回復から金属価格が上昇し、収益の改善を後押ししました。
リサイクル事業では、リサイクル原料の集荷が、新型コロナウイルス感染拡大の影響による経済活動鈍化で一時的にタイト化したものの、金属価格の上昇にも支えられ、年度後半においてはスクラップ市況も堅調に推移し、集荷量、マージンとも増加しました。
JX金属(株)
取締役常務執行役員 金属・リサイクル事業部長 技術本部副本部長
安田 豊
佐賀関製錬所などの事業所で安全・安定操業を継続する一方、銅精鉱の購入条件は引き続き低迷が見込まれます。このような状況のもと、収益最大化を図るべく、さまざまな施策に取り組んでいきます。具体的には、リサイクル原料の増処理に向けた佐賀関製錬所における設備増強投資、リサイクル原料の増調達への取り組みにより、高マージン原料の増処理および収益ベストフィードミックスの追求を行います。そのほかにも、物流効率化の推進による業務効率化とコストダウン、CO₂ネットゼロに向けたCO₂フリー電力の購入開始による環境問題への取り組みなど、事業のさらなる強靭化とSDGs実現への対応を進めていきます。
リサイクル原料の取扱量増を目的に、主要海外拠点である台湾日鉱金属股份有限公司の「彰濱リサイクルセンター」の集荷・処理能力を2.4倍に増強しました。また、国内においても、2020年8月に新たなリサイクル原料の集荷拠点である「JX金属製錬(株)大分リサイクル物流センター」(大分市の大分港大在西地区)の設置に向けた建設工事に着工し、2021年10月の稼働を予定しています。これらの取り組みを通じ、銅精鉱とリサイクル原料の最適ミックスを追求し、より一層の競争力の強化を図っていきます。
大分リサイクル物流センター