当社グループでは、地域住民、顧客、従業員、取引先を含むすべてのサプライチェーンに関わる方々の人権を尊重し、健全な経営を持続することが事業継続の前提条件であると認識しています。この考えのもと、説明会やヒアリングなどの機会を通じて、人権に配慮した事業活動につなげるとともに、人権尊重の企業風土づくりにも取り組んでいます。
評価: 達成・順調 未達
KPI | 2021年度実績・進捗 | 評価 |
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人権研修の受講率: 2021年度100% |
人権の尊重を企業行動規範や社内規則に定めるととも に、グループ各社にて、人権意識の向上と人権問題の発生防 止を目的として、人権研修やeラーニングを継続実施してい ます。2021年度も役員・従業員を対象とした人権研修を実 施し、受講率は100%でした。 |
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サプライチェーンにおける人権調査の実施 | 原料の調達においてOECDガイダンスに準拠したサプラ イチェーン・デュー・ディリジェンスのマネジメントシステ ムを構築し、運用しています。2021年度は金・銀・タンタ ルに加えて新たにプラチナおよびパラジウムについても、外 部監査を受審し、適切な対応がとられていることが認められ ました。また、チリのカセロネス銅鉱山においてサプライヤ ーに対するCSRアンケートを実施しました。 |
当社グループは、国際的に認知されたガイダンスとICMMの基本原則を踏まえ、RBA行動規範の趣旨に則り、人権デュー・ディリジェンスを進め、人権課題に取り組んでいきます。
当社グループでは、取引先に対して「調達基本方針」に基づき、労働者の権利確保、雇用・職業における差別の有無、強制労働や児童労働の有無、紛争鉱物への対応等について確認を行っています。また、2019年度からはサプライチェーン全体で、人権の尊重、労働安全衛生、コンプライアンス、環境保全などの取り組みを実践し、社会的責任を果たしていくために、「CSR調達アンケート」を開始しました。
2021年度は海外取引先17社に対して、「CSR調達アンケート」を行いました。調査結果に基づき、取引先へのフィードバック等を行いながら、サプライチェーンにおいて人権侵害が起きないよう注意していきます。
4. 紛争鉱物への対応
当社グループが事業展開をする上において、当社グループのみならずお取引先様のサプライチェーンも含めて、社会的責任を果たすことが必要であり、お取引先様においても、以下の項目を遵守していただくことをお願いします。今後、以下の項目に違反し行政から不利益処分を受けたお取引先様や以下の項目を遵守していないことが明らかになったお取引先様に対しては、改善過程を確認します。また、以下の項目を遵守いただけない場合には、お取引先様との契約の見直し(解除含む)の要否を検討します。
年々高まる企業の社会的責任と顧客企業からの要請に適切に応えていくため、当社グループにおいては国際基準に沿った取り組みを積極的に進めており、RBAのVAP(Validated Audit Process)監査を、2019年度は東邦チタニウム(株)茅ヶ崎工場およびタニオビス・ジャパン(株)水戸工場にて、2020年度は磯原工場にて受審しました。
RBAのVAP監査は、RBAの行動規範に基づき、労働・安全衛生・環境・倫理に関する基準とそのマネジメントシステムについて、整備状況や遵守状況を評価するもので、磯原工場および東邦チタニウム(株)茅ヶ崎工場ではRBA認証プログラムにおける最上位のステータスであるプラチナを取得しました。今後は受審対象拠点の拡大を検討し、監査を受審し、一つひとつPDCAを回して継続的なレベルアップを図ることで、グローバルサプライチェーン全体での持続可能な社会の実現に貢献していきます。
磯原工場
東邦チタニウム(株)茅ヶ崎工場
タニオビス・ジャパン(株)水戸工場
RBAのVAP 監査証明書
(左)磯原工場、(右)東邦チタニウム(株)茅ヶ崎工場RBAのVAP 監査証明書
(上)磯原工場、(下)東邦チタニウム(株)茅ヶ崎工場
JX金属製錬(株)は、佐賀関製錬所および日立工場を対象に2022年3月よりCopper Markの認証取得手続きを開始しました。両拠点は、社会の発展に欠かせない当社の先端素材の原料を生産する役割を担うとともに、リサイクル原料配合比率をさらに高めた「グリーンハイブリッド製錬」や、CO2フリー電力の導入などを推進することにより、エネルギー消費の低減や資源の有効活用を図っています。Copper Mark認証取得により、両拠点における「責任ある生産」に関する取り組みをさらに進めていきます。
紛争鉱物とは紛争地域において(多くの場合は違法に)産出され現地の武装勢力の資金源となり、人権侵害や非人道的行為の拡大につながる恐れのある鉱物の総称です。紛争鉱物の排除のため、情報開示とステークホルダーからの監視を強化する国際的な流れを受け、当社グループが関連する事業者団体(LBMA※1、LPPM※2、RBAなど)においても調査プログラムが制定され、各事業者に対して調査や外部監査の受審を求めています。
金、銀、プラチナおよびパラジウム地金の生産者であるJX金属製錬(株)では、原料の発生元の確認、リスク評価、流通経路の確認などの内容を含む、サプライチェーン・デュー・ディリジェンスのマネジメントシステムを構築し、運用しています。運用状況は、LBMAおよびLPPMが指定する第三者機関による外部監査を受けた後、同協会に報告されます。本手続きを通じてJX金属製錬(株)の金地金、当社の銀地金は、同協会のGood Deliveryリストに登録されています。同時に、金についてはRBAとGeSI※が定めるRMAP Conformant Smelters(紛争鉱物を使用していない製錬所)リストにも掲載され、紛争鉱物排除の対応が的確にとられていることが認められています。
LBMAおよび LPPMによる外部監査証明書
タンタル粉の生産者であるTANIOBIS GmbHでは、紛争地域および高リスク地域から原料を調達する際は、人権侵害への非関与が ITSCI※により保証されている原料を購入し、サプライチェーン・デュー・ディリジェンスを実施するなど、国際基準に基づくプログラムを厳格に運用しています。この取り組みの結果、紛争鉱物排除の対応が的確にとられていることが認められ、RMAP Conformant Smeltersリストに掲載されています。
また、2019年度からは原料サプライチェーンに関する国際的な監査機関であるRCS Global Groupが提供するBSP(Better Sourcing Program)により、ITSCIと同様のサプライチェーン・デュー・ディリジェンスのシステムを運用しています。
鉱山の開発や運営は、周辺環境に与える影響がとりわけ大きいことから、地域住民の人権に十分に配慮する必要があります。カセロネス銅鉱山を運営するSCM Minera Lumina Copper Chileでは、地域社会支援の基本方針として「住民生活の尊重」「コミュニティと環境の保護」「現行法の遵守」を掲げています。この方針のもと、鉱山の周辺地域で生活する先住民であるコジャ族と、プロジェクト開始当初の2007年から説明会の開催や意見の聴取を通じて、信頼関係の構築に努めています。2021年度も住民の権利を侵害する事例はありませんでした。
住民説明会の様子
当社は2020年4月末に、政府が開始した「ホワイト物流」推進運動への参加を表明し、自主行動宣言に基づき、諸課題の解決に向けた活動を推進しています。例えば、物流事業者との契約において、運転と運転以外の付帯作業の分離、燃料サーチャージの検討・導入など、契約の見直しに適切に対応することを進め、また労働関係法令・貨物自動車運送事業関係法令の遵守を再確認しています。
取り組み項目 | |
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1 | 物流の改善提案と協力 |
2 | 運転以外の作業部分の分離 |
3 | CO2削減のためのモーダルシフトの検討 |
4 | 燃料サーチャージの取り決め |
5 | 契約の相手方を選定する際の法令遵守状況の考慮 |
6 | 荷役作業時の安全対策 |
7 | 異常気象時等の運行の中止・中断 等 |
当社は2021年8月、丸運の完全子会社で液体輸送を手掛ける北豊運輸(株)(北海道苫小牧市)の株式34%を取得しました。北豊運輸は当社グループが取り扱う硫酸の北海道地区における輸送を担っており、今回の出資で輸送基盤をさらに強化していく方針です。
当社グループでは、銅を製錬する工程において、銅精鉱に含まれる硫黄を原料として硫酸を生産しています。硫酸は工業用・農業用等幅広い分野で使用されています。
当社グループでは、不当差別、ハラスメント、強制労働、児童労働などの防止に向け、関連するガイドラインを整備して周知するとともに、定期的な研修の機会を設けて人権意識の定着に注力しています。
JX金属グループ各社及びその役員社員等は、人種、国籍、性別、年齢、信仰、社会的身分、身体的特徴などを理由として、従業員の採用、賃金、労働時間その他の労働条件、取引条件等について不当な差別は行わない。
ハラスメントの防止JX金属グループ各社及びその役員社員等は、セクシャル・ハラスメント(ジェンダー・ハラスメントを含む。)及びパワー・ハラスメントの防止に積極的に取り組むものとする。
個人情報の保護JX金属グループ各社及びその役員社員等は、個人情報保護関連法令及び社内規則等を遵守し、顧客、取引先、従業員等に係る個人情報を適切に保護するとともに、業務上の必要から個人情報を取り扱うに当たっては、細心の注意を払いその適切な管理に努めるものとする。
児童労働、強制労働の防止JX金属グループ各社及びその役員社員等は、児童労働や強制労働に直接かかわることなく、またこれらの問題の解決に貢献すべく努めるものとする。
2021年度は全グループの社員を対象に、「ハラスメント防止」をテーマとした人権研修を実施しました。このテーマは、「JX金属グループ コンプライアンス基本規則」にて、差別・ハラスメントを行わないことを明記していることを受けて、従業員の人権に係る意識向上およびハラスメントへの理解を目的として設定したものです。「ハラスメントは誰もが加害者・被害者になる可能性がある」という考え方のもと、ハラスメントが企業・従業員に及ぼす影響を認識し、一人ひとりが自らの言動や職場の環境を見つめ直す、良いきっかけとなりました。今後もグローバルな事業展開において人権の考え方を理解し、人権に配慮した事業活動を推進していきます。
eラーニングの教材
当社グループでは、人権侵害を含む社内における相談窓口として、「JX金属グループホットライン」を設置し、日常的に発生し得る人権問題から重大な人権侵害まで匿名で相談を受け付けています。ホットラインでは通報案件すべてにつき、その内容および対応状況を当社社長に説明しています。ホットラインの設置については、社内のイントラネットに掲示して、人権研修をはじめとする各種研修にて周知を図っています。ホットラインに相談・通報することによって、通報者に不利益が生じることは一切ありません。2021年度の通報件数は8件でした。
また、救済措置については、相談された事案について、外部のいかなる救済措置によって解決を図ることも制限していないため、各国の法制度に従って他の救済手段を求めることもできます。