従業員が個々の能力を発揮し、心身の健康を保つことで生み出される活力に満ちた職場は、企業の持続的な成長を確保する上で欠かせません。当社グループでは、労働安全衛生の確保や適正な人事評価制度、人材教育など、多様な視点から魅力ある職場づくりに取り組んでいます。
評価: 達成・順調 未達
KPI | 2022年度実績・進捗 | 評価 |
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重大な労働災害発生の低減: 2022年度年千人率(休業4日以上)0.70以下 |
2022年度の年千人率は0.74となりました。災害発生の事実を厳粛に受け止 め、リスクアセスメントの実効性向上や、事故原因究明のための従業員の能力 向上等を通じて、安全衛生マネジメントシステムの継続的な改善に取り組むと ともに労働災害防止に努めていきます。 |
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年休取得率の向上: 2022年度80%以上 |
年休を取得しやすい職場環境の醸成や年休奨励日の増設などの取り組みの継続 実施により、昨年度よりも取得率は向上しましたが、年休取得率は77.1%となりま した。今後もさらなる取得向上に向けた働きかけを実施していきます。 |
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人と組織の活性化に向けた 取り組みの実施 |
ABW(Activity Based Working)やコミュニケーション活性化など諸施策の 充実、高度専門人材やシニア人材の確保・活用、新人事制度の導入などを通 じ、多様な人材が活躍できる環境の整備を進めています。 |
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健康増進に向けた取り組み: 2022年度がん検診受診率70%以上 |
各事業所において受診率向上施策を立案し、専門医によるがん予防に関するセ ミナーを開催するなど、それぞれの環境に合わせた取り組みにより、受診率は 前年度(63.1%)より大幅に向上し78.1%となりました。2023年度は全社員 を対象としたeラーニングの実施、がん検診推奨リーフレットの配付やがん予 防セミナーの開催など、さらなる受診率向上を目指した活動を進めています。 |
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障がい者雇用率の維持・向上: 2022年度2.3%以上 |
2022年度の障がい者雇用率は2.10%となりました。2021年度に新設した「チ アフルサポート室」の増強等を通じ今後も障がい者雇用率の維持・向上を目指 すとともに、障がいのある方が充実した社会生活を送れるよう、積極的な支援 と各種施策を展開していきます。 |
当社グループでは、社員の安全と健康が持続的な成長の基盤であるとの認識のもと、安全確保と健康増進に向けた職場環境の整備に取り組んでいます。
私たちは、JX金属グループの全ての事業領域で働く人の安全と健康を守ることを最優先し、安全・安心かつ健康的に働ける環境づくりにより、魅力ある職場を実現します。
当社グループでは、各事業所・グループ会社に労働安全衛生法に基づく安全衛生委員会等を設置しています。また、マネジメントシステムの枠組みの中で常駐協力会社も含めた労働者と協議する仕組みを設けています。当社本社においては、各事業部・事業所の代表者(安全担当基幹職および労組支部委員長)が出席する中央安全衛生委員会(年1回)および上記代表者のうち、常任委員(各事業部安全担当管理職および中央労組三役)が出席する中央安全衛生常任委員会(年5回)を開催し、安全衛生諸施策の総括と安全衛生管理方針の審議、災害の再発防止策などについて協議しています。さらに、安全衛生に関する情報交換を目的として、労使合同安全衛生巡視(年1回)、安全担当者会議(年2回)を開催しています。2022年度も新型コロナウイルス感染拡大の影響を踏まえ、基本的には会場とオンラインによるハイブリッド開催とし、労使合同安全衛生巡視は感染対策を講じた上で、事業所へ訪問し開催しました。
当社直轄事業所(事業所内のグループ会社を含む)および国内主要グループ会社では、当社社長直属のチームによる定期的な環境安全監査を行っています。抽出した問題点は当社社長に報告後、事業所に通知して改善を促すとともに、その後の対応状況についてもフォローしています。2022年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で現場監査が延期された4事業所を含む計19事業所を対象として実施し、重大な指摘事項はありませんでした。
当社グループでは国内11事業所、海外2事業所でOHSAS18001の認証を取得していましたが、2021年3月OHSAS廃止に伴いISO45001(JISQ45100)を導入することで準備を進めてきました。ISO45001(JISQ45100)はISO45001(JISQ45001)と比べ、より現場を巻き込んだ全社的な労働安全衛生活動を推進することができ、OHSマニュアルをはじめとする各種マネジメント文書の改訂・新規作成に取り組み、計画的に切り替えおよび新規取得を進めており、安全衛生水準のさらなる向上に取り組んでいます。
2021年度でこれら事業所における切り替えは完了し、2022年度以降はより多くの事業所でこの労働安全衛生マネジメントシステムを導入するべく、これまで認証を取得していなかった事業所での新規取得を推進しています。
当社グループでは、前年の安全衛生成績の解析結果に基づき、目標と重点施策を定めた「安全衛生管理方針」を毎年策定し、中央安全衛生委員会で審議・承認した後、グループ全社に展開しています。
当社グループでは、従業員一人ひとりの「危険感受性」を高め、安全意識を向上させるため、茨城県日立市に「危険体感教育センター」を設置し、体験型の安全教育を実施しています。危険感受性とは「危険を危険と正しく感じる」感覚のことであり、これを研ぎ澄ますことによって「危険なことに手を出さない」という行動に結び付けることができます。
実際に発生する労働災害の多くが過去事例の再発(類似災害)であることから、当施設では、過去に発生した労働災害事例の疑似体験を通じて災害が身近なものと捉えることができ、危険性への理解、危険感受性の向上を図るプログラムを用意しています。さらに、新たにVR技術を活用した教育カリキュラムを導入し、実際には体験できない「り災体感」を可能にするなど、労働災害の未然防止に継続して取り組んでいます。また近年、社員の労働災害は減少傾向にある一方、協力会社社員の労働災害が課題となっています。そこで、主要事業所にミニ体感教育施設を導入し、当社グループの社員だけでなく、協力会社社員の危険感受性、安全意識向上にも努めています。危険体感教育センターとミニ体感教育施設が一体となり、従業員の労働災害撲滅を図ります。
VR 体感教育の様子
当社グループでは、事業に携わるすべての人の安全と健康を確保し、安全最優先の意識と危険感受性の高揚に努めています。実際に発生した事故災害をベースにした安全教材「災害再現動画」や、グループ内外で実際に発生した災害事例を題材にした「安全啓発ポスター」などの制作により、安全意識の向上と事故の再発防止に努めています。
安全啓発ポスターの一例
当社グループの各事業所では、労働安全衛生マネジメントシステムに基づきリスクアセスメント活動を展開しています。事業所のリスクについては、「ハザード(危険源)の特定」「災害シナリオの想定」「リスク評価」および「必要なリスク対応(リスク低減措置はまずハード対策を検討し、対応不可な場合のみソフト対策を実施)とその有効性評価」のPDCAサイクルを回すことにより管理しています。
2022年度はこのリスクアセスメント活動の一層の強化を目指し、重篤な労働災害の未然防止へ向けて各事業所における「重大な残留リスク」に焦点を当て、管理面の強化を図りました。リスクアセスメントのレベルアップについては今後も継続して取り組むべき課題であり、残留リスクの管理を含め、リスク低減の進捗見える化や機械安全の考えを取り入れた本質安全化対策のさらなる推進、各事業所内におけるリスクアセスメント推進者・指導者の育成にも取り組んでいきます。
当社は従業員の心身の健康増進諸施策を全事業所参加のプロジェクト体制で推進しています。がん検診受診率向上については、「がんの特性を知り、予防に努めよう、その一環として早期発見のために検診を受けよう」という趣旨で従業員へ各種情報発信、eラーニングを行いました。その結果、2022年度の受診率は全社平均で78.1%と対前年比で15%アップしました。また、全従業員に体力の維持増進の意欲を持ち続けていただくために、まずは自身の筋力や柔軟性、バランス感覚などの現状を把握しようという趣旨で、体力テストを実施しました。
メンタルヘルスについては、従業員が産業医と面談する機会を定期的に設けるなど気軽に相談しやすい環境づくりや、各事業所の担当者教育を行っています。
以上の諸施策推進のベースとなる仕組みとして、種々の健診結果や労働時間実績などを一元管理できる健康管理支援システムを導入したほか、全事業所への保健師の配置を進めています。
体力テストの様子
当社グループでは、2040年長期ビジョンで掲げる「技術立脚型企業」の実現に向け、付加価値創出型人材の確保・育成を進めています。
特集3 人的資本経営の推進人的資本経営を実現するためには、社員一人ひとりの主体的かつ自律的な成長を後押しする職場環境づくりの視点が欠かせません。当社では、多様な人材がやりがいを持って働くことができる環境整備を積極的に進めています。
2020年6月に移転した本社オフィス(東京都港区虎ノ門二丁目)では、「生産性を高める」「技術に触れる」「人と人をつなぐ」の3つをコンセプトに、ABW※の導入、ICTツールの活用など、社員の自律的な成長をサポートするためのさまざまな仕掛けを設けています。しなやかに発展し続ける力を高めていくための革新的なオフィス空間により、社員同士が積極的に交流し、組織を超えて情報が共有され、新たな提案や挑戦が創造される組織づくりを目指していきます。
部屋に籠らないオープンスペースでの打ち合わせ、執務を促すレイアウト構成
直感的に技術特性などが理解できる体感展示を備えた「ショールーム」を設置
当社グループでは、国内外の諸法令の定めに従い、高齢者雇用、障がい者雇用、女性の活躍推進および外国人の雇用などに取り組むとともに、多様な人材が働きがいを感じながら個々の能力を最大限発揮できる環境の実現を進めています。
当社では「人と組織の活性化」の一環として、多様な人材がやりがいを持って働くことができる環境整備を積極的に進めています。妊娠・出産、育児・養育、介護などの事情を抱えていても、持てる力を十分に発揮して働くことができる環境の実現に取り組んでいます。出産や育児に関係する制度では、法定基準の制度に加え独自の制度を設けています。また、利用できる公的サービスや会社制度の紹介に加え、両立におけるポイントや上長が果たすべき役割などをまとめた『育児・介護両立支援ハンドブック』を作成し、社内に展開しています。
当社では、「多様な人材がやりがいを持って働くことのできる環境整備」の取り組みの一環として、在宅勤務制度を2018年1月より導入しています。コロナ禍においては感染状況および官公庁の要請等を踏まえながら、出社と在宅勤務を併用し、取引先、地域社会の皆様、従業員とその家族の安全確保を図るとともに、社会に必要不可欠な製品を届ける社会的責任を果たすため、事業の継続に努めてきました。コロナ禍が収束した後も、育児や介護等の背景がある方に限らず多様な人材が幅広く活躍できるよう、引き続き在宅勤務制度を活用していきます。
より自律的な働き方を推進していくことを目的に、現行のコアタイムを設定しているフレックスタイム制度に加えて、本社および磯原工場の一部においてはコアタイムを設けないフレックスタイム制度を導入しています。また、フレックス対象時間は深夜時間帯を除く5時~22時とし、柔軟に勤務時間を選択できる制度としています。
当社では以前から育児に関する支援に取り組んでおり、近年は男性社員の育児休業取得率も上昇しています。各種支援策の浸透を図るため、2020年度より実施しているキャリアデザイン研修において、制度説明に加えて、育児休業経験者や仕事と育児を両立している社員とのパネルディスカッションを実施するなど、周知に取り組んでいます。
私が所属する知的財産部では、既に複数名の方が育休制度を利用されていました。そのような実績があったことは利用への後押しになりましたし、また実際に利用された方の声を聞くことで、復職までを含めたイメージを持つことができた点も大きかったと思います。上司や同僚も育休取得を快く受け入れてくださり、大変感謝しています。
業務の引き継ぎにあたっては、整理した担当業務/工数リストをもとに、業務項目ごとに上司から引継者をアサインしていただけたので、心おきなく3ヵ月間、育児に励むことができました。職場で別の方が利用される際は、私もできる限り協力したいと思います。
JX金属(株)
知的財産部
渡邊 翔
当社では出産や育児に関わる法定基準の制度に加え独自の制度を設けています。
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対象となる家族が常時介護を必要とする場合、以下の制度が利用できます。
法定制度 | +JX金属の場合 | |
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