銅はカーボンニュートラルの実現に不可欠な脱炭素資源であり、銅の供給者や利用者は「緑の実現者=Green Enabler(グリーン・イネーブラー)」です。
銅需要の拡大に応えるためには銅鉱石とリサイクル原料を活用した供給量の増強が必要です。
銅の需要は長期的に拡大していく一方、既存鉱山からの銅鉱石やリサイクル原料の供給には制限があり、銅の需給はひっ迫することが見込まれます。従って、地球規模の脱炭素化達成に不可欠な銅の需要を満たすには、銅鉱石とリサイクル原料双方の活用が不可欠です。
サステナブルカッパーの進化と普及に向け、4つの施策を推進します。
Scope1(燃料や工業プロセス)については、省エネ、燃料転換、炭素回収・炭素循環を通じて、自社で排出するCO2量の削減に努めています。また、Scope2(電力)に関しては、カセロネス銅鉱山、JX金属製錬(株)佐賀関製錬所および日立工場のほか、国内外の主要拠点にて、CO2フリー電力または再生可能エネルギー由来の電力への切り替えを完了し、これによりCO2排出量が大幅に低減しています。また、再生可能エネルギーの自社創出等も検討していきます。
特集2:JX金属グループの気候変動戦略再生可能エネルギー由来電力への転換によりCO2排出量を大幅に削減したカセロネス銅鉱山
当社グループは他社のCO2排出にあたるScope3のCO2削減にも積極的に取り組んでいきます。例えば、物流における取り組みとしては、EV・FCVへの転換、輸送における新技術(下記参照)や代替燃料の導入の検討を進めています。また、カセロネス銅鉱山以外の当社出資鉱山では、CO2フリー電力の導入や重機の電動化が推進されています。
当社グループの鉱石・硫酸の運送を担う鉱硫船KORYUについて、資源メジャーのBHP社と共同でローターセイルの設置を検討しています。これは、船体上の回転する円柱によって発生する圧力差を揚力へ変換するマグヌス効果を利用した船舶推進機構の一種で、燃料消費量低減により約5%のCO2排出量削減を見込んでいます。現在、最終的な安全性検証作業中で、最短で2023年夏に設置・稼働開始となる見込みです。
ローターセイル設置後の鉱硫船KORYU
マグヌス効果のイメージ
当社の銅製錬プロセスである自溶炉法は、原料である銅精鉱の反応熱を原料自身の溶解に効率よく使用するだけでなく、余剰となる反応熱を利用してリサイクル原料を溶解することができるため、化石燃料等を用いる必要がありません。そこで、「持続可能な鉱物資源開発・生産」と「リサイクル」の最適な組み合わせを追求し、2040年にリサイクル原料比率(原料投入比率もしくは製品中の含有比率)50%以上を目指す「グリーンハイブリッド製錬」を推進しています。具体的な課題とその対応は右記の通りです。
ICA(国際銅協会)の定める右記32項目のESG基準にかかるCopper Markの取得に向け、JX金属製錬(株)佐賀関製錬所および日立工場において取り組みを進めています(現在、監査の受審中)。
また、当社グループでは、RBAの行動規範に則った活動を行うことで、ESGへの取り組みを強化しています。RBA行動規範の遵守状況を評価するVAP監査を受審した拠点のうち、磯原工場および東邦チタニウム(株)茅ヶ崎工場においては、監査において200点満点を獲得し、RBA認証プログラムにおける最上位のステータスであるプラチナを取得しました。
JX金属製錬(株)佐賀関製錬所
JX金属製錬(株)日立工場
サステナブルカッパーの普及に向けて協働いただける企業等と「グリーン・イネ―ブリング・パートナーシップ」を形成し、脱炭素社会・循環型社会への移行を加速させ、パートナーとの製品・スクラップ回収、原料の再利用、共同技術開発の促進等を進めていきます。
グリーン・イネーブリング・パートナーシップのロゴマーク
カーボンフットプリント(CFP): 商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算した値
Scope1(スコープ1):自社での燃料の使用や工業プロセスによる直接排出の温室効果ガス排出量
Scope2(スコープ2):他社から供給された電気、熱、蒸気を使用したことによる間接排出の温室効果ガス排出量
Scope3(スコープ3):Scope1、Scope2以外の事業者の活動に関連する他社の温室効果ガス排出量(製品の使用、廃棄など)
RBA(Responsible Business Alliance):主に電子メーカーやそのサプライヤーである電子部品メーカーなどにより構成される業界団体で、当社先端素材分野の顧客の多くが加盟。グローバルサプライチェーンにおける社会、環境、倫理面の改善に取り組んでいる