特集1 先端素材を通じた社会の発展への貢献

持続可能な社会の実現に向けて、IT、モビリティ、ヘルスケア、エネルギー、建築などさまざまな産業でデジタルデータの活用が進展し、各分野に用いられる先端素材のニーズがさらに拡大しています。また、地政学リスクの高まりから、再生可能エネルギー、蓄電池の開発が加速しています。当社グループは、こうした背景を踏まえ、先端素材を通じた社会の発展に貢献することを目指しています。

ミッション

「装置産業型企業」から「技術立脚型企業」への転身により、半導体材料/情報通信材料のグローバルリーダーとして、持続可能な社会の実現に貢献する

ビジョン

「フォーカス事業」を成長戦略のコアとして位置付け

  • フォーカス事業の成長を支える「ベース事業」は事業規模にとらわれず最適な体制を構築する
  • 半導体材料/情報通信材料に不可欠な銅およびレアメタルを中心ドメインと位置付ける

次代の潮流に合致したニッチトップ製品の開発

当社グループは、強固なR&D体制と創業以来100年以上にわたり培ってきた要素技術を活かし、次代の潮流に合ったニッチトップ製品の開発を推進しています。また、お客様との強固なリレーションシップを基盤に、新たな市場ニーズの把握に努めています。

社会を根底から支える主力2製品

半導体用スパッタリングターゲット

半導体メーカー、製造装置メーカーとの強固な関係に支えられたビジネスモデル

当社では銅をはじめ、タンタル、チタン、タングステン、コバルトなど、さまざまな種類のスパッタリングターゲットを提供しています。長年の事業活動で培った高純度化など高度な技術により、高品質な製品を安定的に生産しています。

半導体用ターゲット製品のビジネスモデルのイメージ

圧延銅箔

「市場開発型アプローチ」によるエンドユーザーとの関係強化

圧延銅箔は、スマートフォン内部の部品と部品をつなぐ折り曲げ可能な配線材料であるFPC(フレキシブルプリント基板)に用いられており、スマートフォンの小型化や長寿命化に貢献しています。当社では、エンドユーザーとの関係強化による開発ニーズを早期に把握することで、競合他社に先駆けて製品の上市を行う「市場開発型アプローチ」により、1stベンダーの地位を確保し、競争優位性を維持しています。

「市場開発型アプローチ」のイメージ

事業領域の拡大、未来の社会を支えていく第3の柱

結晶材料

第5世代移動通信システム(5G)の普及によって、身のまわりのあらゆるモノがネットワークでつながる本格的なデジタル社会の到来が期待されています。データセンター等で用いられるInP基板、放射線・赤外線検出用途で用いられるCdZnTe基板などは、今後さらなる市場の拡大が期待されています。当社グループでは、半導体用スパッタリングターゲット、圧延銅箔に次ぐ「第3の柱」となるような製品群を産み出すべく、さまざまな活動を推進しています。

InP基板市場の見通し

当社が取り扱う結晶材料であるInP基板は、データセンターやウェアラブルデバイスにおいて需要が増大しており、その市場は2021年度から2027年度にかけて年率16%を超えて成長していく見通しです。

今回中計における主な取り組み
  • 結晶材料の事業部化による体制強化(2025年度を目途)
  • InP基板の生産能力を拡大
    →磯原工場での設備増強、新工場建設検討
  • CdZnTe基板の大型化、高品質化
  • 防衛・メディカル等新規用途の探索、周辺事業への進出
  • 新規製品の開発

ビジョン実現に向けた取り組み

当社グループでは、半導体材料/情報通信材料における今後の需要拡大を見据え、茨城県ひたちなか市を中心に国内外で生産能力の増強を積極的に進めています。

ひたちなか新工場(仮称)の建設

ひたちなか新工場(仮称)完成イメージ

2022年3月、茨城県ひたちなか市に大規模用地を取得し、新たな中核拠点となる「ひたちなか新工場(仮称)」の建設を進めています。新工場は、半導体用スパッタリングターゲットや圧延銅箔といった既存成長分野に加え、第5世代移動通信システム(5G)のさらに先を見据えた先端素材製造等の新規事業を担っていく方針です。
2023年1月には起工式を執り行い、茨城県副知事の横山征成氏、ひたちなか市長の大谷明氏をはじめ、多数の地域関係者に出席いただきました。新工場は2025年度以降、順次操業を開始していく予定で、最終的には500名以上の雇用を見込んでおり、地域経済の発展にも大きな期待が寄せられています。当社グループのビジョン実現はもちろん、茨城県やひたちなか市が世界の先端素材供給拠点としてプレゼンスを高めていく、その一角を担うにふさわしい工場を目指してまいります。

起工式での記念撮影

ひたちなか新工場(仮称)の概要
所在地 茨城県ひたちなか市新光町
面積 約24万m²

ひたちなか市と包括連携協定を締結

当社は2023年1月、ひたちなか市での新工場建設にあたり、地域社会の一員として発展をともにしたいとの考えから、同市と包括連携協定を締結しました。
新工場の稼働による雇用創出・産業振興への貢献はもとより、企業版ふるさと納税制度を活用して1億円を寄付することにより、新工場が所在する阿字ヶ浦地区のコミュニティセンターの運営支援や次世代育成活動など地域の未来のためのさまざまな活動を支援していきます。

茨城県における地域連携

日立市での新工場建設

当社は創業の地である茨城県日立市内に、半導体用スパッタリングターゲットと圧延銅箔の生産を担う2つの新工場の建設を進めています。
茨城県日立市は、当社の主要拠点である日立事業所があり、銅をはじめとする非鉄金属素材の製造や加工、研究開発、環境を守るために欠かせないリサイクルの推進など、さまざまな事業を展開しています。

日立新工場(仮称)の建設

圧延銅箔を製造する「日立新工場(仮称)」は、日立事業所内の白銀地区に160億円を投じて建設を進めています。圧延銅箔は現在、日立事業所内において最終工程である表面処理を行っていますが、圧延工程については倉見工場(神奈川県高座郡)のみが担っています。圧延工程の生産ラインを新工場にも設置することで、2020年度比で25%の生産能力増強とともに、BCP体制の強化を図る狙いです。

    BCP:Business Continuity Planning(事業継続計画)

日立新工場(仮称)

日立新工場(仮称)の概要
所在地 茨城県日立市白銀町(日立事業所 白銀地区)
延床面積 8,001.77m²
生産品目 圧延銅箔
従業員数 20~25名(予定)
稼働開始 2024年度(予定)
日立北新工場(仮称)の建設

半導体用スパッタリングターゲットを製造する予定の「日立北新工場(仮称)」は、日立市北部の工業団地内に140億円を投じて建設を進めています。
当社は、2020年12月に同製品の生産能力を2020年度比30%増とする計画を発表しましたが、半導体産業の拡大が想定を超えて進む中、発表内容から大幅に上積みし、総額320億円規模、2020年度比80%増の能力増強を行うこととしました。日立北新工場(仮称)の建設はその一環で、半導体用スパッタリングターゲットの溶解・圧延工程を担う予定です。

日立北新工場(仮称)

日立北新工場(仮称)の概要
所在地 茨城県日立市砂沢町
延床面積 23,348.04m²
生産品目 半導体用スパッタリングターゲット
従業員数 30~40名(予定)
稼働開始 2024年度(予定)
設置設備 半導体用スパッタリングターゲット溶解・圧延設備(予定)

米国アリゾナ州での新工場建設

当社は、米国における半導体産業の集積地であるアリゾナ州に半導体用スパッタリングターゲットの下工程を担う拠点、 JX Nippon Mining & Metals USA, Inc.を置いていますが、このたび新たに現拠点の約6倍となる約26万m2の土地を取得し、新工場の建設を進めています。2022年10月には、メサ市の新工場建設予定地で起工式を開催。式典には行政関係者や現地メディアなど多くの方々に出席いただきました。
半導体産業の集積が進むアリゾナ州において十分な広さの用地を確保することで、当社は今後さらに半導体用スパッタリングターゲットの生産能力を顧客ニーズに応じて機動的に拡大していきます。まずは2024年度以降の稼働開始を目途として生産設備を新設する予定です。また、新工場を半導体用スパッタリングターゲットの拠点としてだけでなく、新規事業展開のための用地としても活用し、北米における先端事業分野の中心地としていく考えです。

新工場のイメージ

アリゾナ州商業公社CEO サンドラ・ワトソン氏

メサ市長 ジョン・ジャイルズ氏

JX Nippon Mining & Metals USA, Inc. 桑原真砂社長

イノベーション促進体制の確立

当社グループは、「非鉄金属に関するイノベーション」をキーワードに、先端素材、高機能・多機能材料を中心に、幅広い領域で新規事業のパートナーとの共創に取り組んでいます。その一環として、2023年7月、茨城大学工学部と包括連携協定を締結しました。
本協定では、「茨城県で活躍し、地域の発展に貢献する人材の育成」を主眼としており、当社はインターンシップの茨城大学生向けコースを新設して、同大学からの受け入れを拡大する予定です。また、共同研究の可能性を探るため、工学部の教員を対象にした見学会等も計画しています。包括連携協定の枠組みを通し、イノベーションの促進に向け、次代の技術系人材の育成・獲得、並びに共同研究の可能性を追求していきます。

オープンイノベーションの推進
茨城県における地域連携

締結式の様子

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