(写真)煙害で荒廃した山に緑を取り戻した日立鉱山の大島桜
当社グループは事業活動が環境へ及ぼす影響を十分に認識し、資源と素材の生産性を高める技術開発の推進により、地球規模の環境保全に貢献することを基本方針としています。また、脱炭素社会・循環型社会の形成を目指して推進していくことを環境基本方針において定め、目標の管理を明確にした上で環境負荷の低減に努めています。事業の遂行にあたっては、サプライチェーンのあらゆる段階において環境負荷を低減させることを追求しています。
評価: 達成・順調 未達
KPI | 2020年度実績・進捗 | 評価 |
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CO₂自社総排出量:2050年度CO₂ネットゼロ、 2040年度50%削減(2018年度比)に向けた取り組みの推進 |
目標達成に向け全グループを横断したカーボンフリープロジェクト(CFP) を発足するとともに、各拠点でのCO₂フリー電力の導入をはじめとする各種取り組み を実施・開始しました。また、これらの活動を踏まえ、2021年度には、CO₂排出に かかる従来の中間目標を10年前倒し、2030年度に50%削減とする新たな目標に 設定しています。 特集1 |
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リサイクル原料比率:リサイクル原料品目の拡大 | 銅製錬におけるリサイクル原料投入比率を全体の50%まで大幅に引き上げる 目標を掲げるとともに、目標達成に向けた社内の技術開発体制の整備、リサイクル 原料増処理に向けた集荷センターの増設や物流拠点の新設などに取り組みました。 特集2 |
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埋立処分比率:2020年度1%未満 | 各種環境規制等の遵守はもとより、環境に及ぼす影響を最小限に抑えること を目的として、廃棄物を削減すべく埋立処分比率1.0%未満を維持する目標を掲 げています。2020年度の埋立処分比率は0.51%でした。 ESGデータ集(廃棄物・副生物) |
私たちJX金属グループは、非鉄金属・先端素材の総合メーカーとして資源と素材の生産性革新に挑戦するとともに、各種環境規制の遵守はもとより、地球温暖化対策をはじめとする地球規模の環境保全に積極的に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献するため、以下の活動を展開します。
1. 技術革新とエネルギーの転換を推進し、温室効果ガス排出ゼロを目指すことで、脱炭素社会の実現に貢献する。
2. 社会の成長と高度化を支える環境に優しい先端素材を社会へ供給する。
3. すべての事業活動において、資源循環を推進し、ゼロエミッションを目指す。
4. 環境教育等により、従業員一人ひとりの環境保全意識向上を徹底し、より環境への負荷が少ない事業活動に繋げる。
5. 環境保全活動の情報をステークホルダーと共有し、社会との共生を図る。
当社グループでは環境マネジメントシステムの確実な運用により、各種法規制の遵守に努めています。遵守状況は当社本社環境安全部により統括管理され、安全・環境委員会を通じてESG推進会議に報告されます。毎年開催される環境管理担当者会議では、法規制の動向に関する情報提供や、各事業所における対応状況報告などを通じて、遵法体制の強化を図っています。また、各種法規制の周知徹底のため、当社本社および各事業所において、従業員の階層ごとに定期的な教育や研修・訓練などを行っています。
2020年度も環境に関わる法規制などの違反について、規制当局からの不利益処分(許可の取り消し、操業停止命令、設備の使用停止命令、改善命令、罰金など)はありませんでした。
各事業所において年1回以上の内部環境監査を実施するとともに、当社本社環境安全部およびJX金属製錬(株)環境安全部による環境安全監査を定期的に実施しています。2020年度は17ヵ所を監査しました。
安全衛生・環境保全に関する活動については、ESG推進会議の下部組織である安全・環境委員会において計画の策定・推進、活動状況のレビュー等を行っています。安全・環境委員会は、半期に1回開催しています。
当社グループでは、「環境基本方針」に基づいて定めた「環境保全行動計画」の確実な実施のため、ISO14001に則った環境マネジメントシステムを構築しています。当社社長をトップに経営層から各事業所・関係会社の従業員まで一体となって、環境保全の推進と環境リスクの回避を実現するため、各委員会の開催や部会の開催など多層的な管理体制を構築しています。なお、2020年度の環境事故の発生はありませんでした。
当社グループは資機材の購入にあたり、環境負荷など社会的影響の低減を目的として「グリーン調達方針」を定め、これに基づき具体的なサプライヤーの選定条件を定めた「グリーン調達ガイドライン」を策定しています。本ガイドラインはグリーン調達に関して最低限遵守していただきたい「必須条件(最低要求基準レベル)」と、配慮していただきたい「実施要望条件(要望レベル)」を示しており、すべてのサプライヤーに対して適用されるものです。当該ガイドラインは、当社が調達先に対して実施している「CSR調達アンケート」の中で遵守状況を確認しています。
JX金属グループでは、2030年度までのCO₂自社総排出量半減、2050年度までのCO₂ネットゼロを掲げるなど、脱炭素化に向けた取り組みを強化しています。また、リサイクルをはじめとする資源循環型社会に寄与する事業の拡大も進めています。そのほか、自然環境保護をはじめとする環境保全活動にも継続して取り組んでいます。
脱炭素の取り組み(特集1) 資源循環の取り組み(特集2)
当社グループの事業活動においては、銅鉱山の操業プロセスや、製錬所での冷却水(主に海水)などとして多くの水を使用しています。水資源は当社グループの事業活動に不可欠であり、また当社グループの生産拠点等が立地する地域社会においても大切な資源であると認識しています。こうした考えのもと、これらの拠点では、水使用量の適切な把握を行い、削減や再利用の検討を行うことで水資源の有効活用に努めています。
当社が操業を行うカセロネス銅鉱山では、現地管理当局による水の使用許可量よりさらに厳しい使用量の上限を定め、取水量と排水量についての収支の状況を監視しています。また、鉱山の下流地域においては、海水からの脱塩処理水の供給も実施しており、農業用水や水道水として地域住民に使用されています。
当社グループの事業活動において、特に鉱山での操業は生物多様性との関わりが強いため、十分な配慮が必要であると認識しています。当社グループでは国内外で、さまざまな取り組みを実施しています。
当社が操業を行うチリのカセロネス銅鉱山では、生物多様性の保護を目的として15種類、48,200本の原生植物の植林が1.43km²のエリアで進められています。植林するエリアは、鉱山敷地内のラマディージャス、敷地外のマイテンシージョおよびアモラーナスに位置しています。また、植林のほかにも現地に自生する植物の生育状況のモニタリング、カセロネス銅鉱山周辺に自生する高地特有の植物の繁殖・分布と気候の影響等との関連性の研究も進められています。
国内では、休廃止鉱山の跡地を中心に、植林・下刈作業など森林整備活動を継続的に行い、自然環境の維持増進および生物多様性保全に取り組んでいます。
カセロネス銅鉱山周辺に自生する植物
当社グループは1905年の創業以来、全国各地で鉱山を操業し、非鉄金属などの安定供給と日本の経済発展に貢献してきました。しかし、そのほとんどが鉱量枯渇に伴って操業を停止しており、現在では休廃止鉱山として坑廃水処理などを行い、自然環境の維持・回復を図っています。
当社が所管する39ヵ所の休廃止鉱山のうち12ヵ所については、鉱山保安法に基づき、坑廃水処理を継続する義務が課せられており、JX金属エコマネジメント(株)がこれらの管理を担っています。主な業務は、坑内および堆積場などから出る重金属を含む強酸性の坑廃水を無害な水質にする処理と、堆積場や坑道などの維持・保全です。坑廃水は、雨水などが鉱山に残る鉱石や堆積場の捨石・鉱さいなどに接触することによって絶え間なく発生するため、1日たりとも休むことなく処理を行う必要があります。こうした休廃止鉱山の管理により、自然環境の保全に努めています。
坑廃水処理を実施している休廃止鉱山
当社グループは、鉱山の閉山時における周辺地域の環境・社会への影響を最小化することが重要と考えています。稼働中のカセロネス銅鉱山については、関係当局、地域コミュニティ等のステークホルダーとの対話を通じて閉山計画を策定した上、必要な対策を実施するための財政的な準備等を実施することにより、閉山時の適切な対応を担保しています。
当社グループでは、化学物質管理基準を自主的に定めています。使用禁止または廃止する物質(多くの有機塩素化合物、水銀化合物、鉛化合物等)および使用を監視する物質(フタル酸エステル類、トルエン、キシレン等の揮発性有機化合物等)を定め、使用を管理することにより、その有害性の低減に努めています。また、グリーン調達ガイドラインにおいても製造工程および資機材に含有してはならない物質を明確に示しており、サプライヤーに対して周知しています。さらに、安全性情報をお客様をはじめ、製品に関わるすべての方に提供することに努めています。
当社グループでは、低濃度PCB処理事業やアスベスト処理事業などを通じて、有害廃棄物を無害化することで環境保全に貢献しています。JX金属苫小牧ケミカル(株)では、2014年に北海道内初の低濃度PCB廃棄物の無害化処理施設として環境大臣認定を受け、地域の低濃度PCB廃棄物処理に貢献しています。また、JX金属環境(株)では、アスベストの溶融無害化処理事業を行い、2020年度は、約3,254トンの廃アスベストを処理しました。
一方、当社グループ所有の高濃度PCB機器については、中間貯蔵・環境安全事業(株)における処理を進め、首都圏以外の事業所での処理は完了し、残っている事業所でも期限内に処理完了の予定です。また、低濃度PCB機器についても、JX金属苫小牧ケミカル(株)など民間の処理会社を利用した処理を計画的に進めており、処分期限2年前の2024年度までに処理完了の予定です。
※ ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、電気絶縁性が優れていることから、主としてトランス(変圧器)、コンデンサ(蓄電器)等の絶縁油や感圧複写機等に使用されていたが、その有害性から現在は新たな製造・輸入が禁止されている化合物。
JX金属苫小牧ケミカル(株)のロータリーキルン式焼却炉