ニュースリリース

2025年度

2025年10月14日

JX金属株式会社

レーザー核融合スタートアップの株式会社EX-Fusionへの出資決定について

 JX金属株式会社(社長:林 陽一、以下「当社」)は、株式会社EX-Fusion(取締役社長: 松尾 一輝、以下「EX-Fusion社」) が実施したシリーズAラウンド(エクステンション)において発行する株式を取得いたしました。

 

 現代社会においては、多くのエネルギーを化石燃料に依存しており、CO2による地球温暖化、エネルギーの安定供給、そしてエネルギー自給率の向上が世界的な課題となっています。こうした背景のもと、様々な再生可能エネルギーおよび次世代エネルギーの開発が企業や国研機関を中心にグローバルで進められていますが、中でも核融合発電※1は、燃料となる重水素を海水からほぼ無尽蔵に確保でき、投入したエネルギー以上のエネルギーを得られ、発電時にCO2を排出しないという特長から、エネルギー分野におけるゲームチェンジャーとして期待が急速に高まっています。

 

 EX-Fusion社は、レーザー方式による核融合発電の社会実装を目指す大阪大学発のスタートアップです。光制御技術、連続原料供給装置、高出力レーザー技術など、独自の技術を活用し、レーザー核融合炉の実現に向けた研究開発を加速しています。これまでに高出力レーザーの高精度稼働試験や微小燃料へのレーザー精密照射などの重要な技術検証に成功しており、本分野における世界有数のトップランナーと評価されています。

 

 当社は、以前よりEX-Fusion社と協業し、当社製品であるレーザーアプリケーション用YAG※2セラミックス(以下「YAGセラミックス」)の技術開発を推進してまいりました。核融合システムにおいて、燃料を加熱・爆縮させて核融合反応を維持させるレーザーは、重要な構成要素のうちのひとつであり、高出力・高耐久性・繰り返し安定性といった様々な性能が求められます。YAGセラミックスは、大口径化や結晶中の添加元素(ドーパント)の均質化といった要件に対応可能であり、その適用が期待されています。
 当社は、グローバルトップシェアを誇るスパッタリングターゲットの開発・製造で培った原料粉体の取り扱いや焼結技術を応用することで、レーザー核融合に適した高性能YAGセラミックスを製造できる世界でも数少ない企業の一つです。これまでEX-Fusion社とは、YAGセラミックスを利用したレーザー特性の向上に取り組んでまいりましたが、今回の出資を通じて、技術深化をさらに加速させるとともに、核融合炉周辺材料においても協業を検討し、レーザー核融合発電の社会実装に貢献してまいります。

 

 今後も当社は、パートナーとの共創による製品・技術開発に積極的に取り組み、革新的な先端材料の提案・提供を通じて、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

以 上

 

6inches_YAG.JPG当社YAGセラミックス(直径6インチ) 

 

参考

YAGセラミックスの詳細製品ページはこちら

 

※1;軽い原子核同士を融合させることで膨大なエネルギーを生み出し、それを発電に利用する技術。海水に含まれる重水素などを燃料とし、発電時にCO2を出さないクリーンで持続可能なエネルギー源として期待されている。レーザー方式(慣性閉じ込め方式)と磁場閉じ込め方式が代表的な方式。

※2;YAGは、イットリウムとアルミニウムの複合酸化物(Y3Al5O12)から成るガーネット構造の結晶のこと。イットリウム(Yttrium)、アルミニウム(Aluminum)、ガーネット(Garnet)の頭文字をとった略語。

 

EX-Fusion社について (2025年10月14日現在)

会社名 株式会社EX-Fusion
設立 2021年7月
所在地 大阪府吹田市山田丘2-8大阪大学テクノアライアンスC棟 C806
資本金 1,239百万円
事業内容 レーザー核融合向け高出力レーザー、レーザー制御装置、ブランケット、ターゲット供給装置の開発。
レーザー加工用装置の開発・コンサルティング。
企業HP https://ex-fusion.com/