
脱炭素
当社グループでは、気候変動を地球規模で解決すべき喫緊の課題と捉え、その解決に寄与するべく、CO2ネットゼロを最終目標に掲げ、その達成に向けた取り組みを一層加速しています。
脱炭素ビジョン
当社グループの事業はリサイクル原料をはじめとする資源循環に取り組むことで、Scope3を含めたCO2排出量や製品カーボンフットプリント(CFP)の低減やお客様のニーズの充足につながることに着目し、資源循環と脱炭素の両立を進めてまいります。2024年6月に5つの施策からなる脱炭素に関するビジョンを策定しました。
脱炭素ビジョン
当社は、お客様ニーズの充足、社会課題の有機的解決、自社製品の魅力度向上を同時に実現できる脱炭素活動を、次の5つの施策を通じて推進してまいります。
- 1.「資源循環」を軸としたCO2削減
- 2.「社外連携」を通じたサプライチェーン全体にわたるCO2削減
- 3.「自社製品のCFP低減」に向けたScope1,2,3の並行削減
- 4.自社の素材技術を活用したCO2削減
- 5.CO2削減によるネイチャーポジティブへの貢献とその評価

TCFD提言に沿った情報開示

当社グループはTCFDの提言に従い、「ガバナンス」「リスク管理」「指標と目標」「戦略」の情報開示フレームワークに基づき積極的な情報開示に努めます。また、気候変動に対応する具体的な対策を講じます。
ガバナンス
当社グループにおける気候変動対応に関する基本方針の策定、重点目標の設定、それらのモニタリング等については、社長 の諮問機関であるESG推進会議で行っています。ESG推進会議は、社長を議長、当社の経営会議メンバーを構成員(社外取締役もオブザーバーとして参加)とし、原則として年2回開催されます。なお、審議・決定した事項については、内容に応じ、適宜、経営会議や取締役会へ付議・報告しています。
リスク管理
当社グループでは、気候変動に係るリスク・機会についてはESG推進部が各部門と連携し、TCFD提言のフレームワークに 沿ってシナリオ分析を含む評価・特定を行っています。シナリオ分析にあたっては、気候変動影響に伴う規制や事業への影響等のリスク要因を幅広く情報収集・分析し、気候変動対応に係る自社 のリスク・機会の把握、中長期的な事業戦略上の対策などを検討しています。分析の結果や対応策の実施状況等については、ESG推進会議等を通じて経営陣に共有し、それをもとに各部門がESG推進部とも連携しながら取り組みを進めています。
気候変動に対する体制

指標と目標
当社グループは、気候変動における指標をCO2自社総排出量(Scope1,2)と定め、2050年度にCO2自社総排出量のネットゼ ロを目指すことを目標としています。2018年度のScope1,2におけるCO2自社総排出量を基準として、2050年度からのバックキャストで2030年度までに50%減を中間目標に設定しています。

戦略
1.
気候変動関連リスク・機会の認識
〈気候変動関連リスク・機会の分析〉
気候変動が当社グループおよび当社グループ事業に及ぼすリスク・機会の抽出、リスクへの対応と機会の実現に向けた戦略を検討するに当たって、国際エネルギー機関(IEA)の「World
Energy Outlook(WEO)」を参考としました。このほか、国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の地球温暖化シナリオを分析に用いました。
〈気候変動リスク・機会の特定について〉
気候変動に伴う脱炭素社会への移行を想定すると、再生可能エネルギーへの電源構成の転換、電動化等の電力利用の変革、サーキュラーエコノミーの社会実装等に向けて当社グループ事業の果たす役割は大きく、製品需要の増加や高機能化などの機会が想定されます。
一方、当社グループ自身がグローバルでカーボンニュートラル化を進めることに伴うコスト増加やその遅れによる機会損失などのリスクも存在します。また、国内外の事業所において、異常気象により生産設備や物流網が被害を受け、操業停止に陥る物理リスクの高まりが考えられます。
特定したリスク・機会
区分 | 影響 | リスクまたは機会 | 対策 |
---|---|---|---|
移行リスク |
政策・法規制 | CO2ネットゼロ達成に向けたコスト増加 |
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国内外での炭素税等の導入・強化 |
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評判 | 脱炭素や環境負荷低減への対応遅れによる機会損失 |
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物理リスク |
急性 | 異常気象による設備毀損や操業停止 |
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機会 |
製品 | 脱炭素社会に必要な非鉄金属需要の増大(ベース事業) |
|
ハイエンドな電子材料の需要増大(フォーカス事業) |
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||
サーキュラーエコノミー | 資源循環型社会の実現 |
|
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車載用LiBのリサイクル需要の増加や義務化 |
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2.
シナリオ分析
脱炭素社会・資源循環型社会への移行に伴い、当社グループの事業に係る非鉄金属や高機能電子材料の需要が伸びていくことが想定され、これに応えるための能力増強、技術開発やパートナーシップ構築をいかに実現していくかがポイントと考えています。
一方、当社グループのカーボンニュートラルへの移行をスムーズに進めていくこと、自然災害に伴う物理リスク低減と発現時の影響の最小化に向けたBCP高度化が重要となること等がシナリオ分析の結果から見えてきました。
取り組み事例①
① CO2ネットゼロ達成に向けたコスト増加
当社グループのCO2自社総排出量(Scope1,2)の約6割を占める電力は、国内外の主要事業所でCO2フリー電力への切り替えを進めています。また、自社での再生可能エネルギーの
創出や製造プロセスで用いる電力以外のエネルギーについて
の対策も検討しています。
こうした取り組みに必要となる設備投資・研究開発費やCO2フリー電力と通常電力との価格差(プレミアム)等が追加コストとして発生していますが、非鉄金属業界で初となるトランジション・ファイナンスの活用や省エネ活動等を通じたコスト削減により、脱炭素に向けて着実に進めていきます。
② 国内外での炭素税等の導入・強化
内外で検討されている炭素税等が導入された場合、CO2排出量に応じたコスト増加リスクが想定されます。なお、炭素税が導入されるとすれば年間のコスト負担増は約70億円と想定されます。
当社グループはカーボンニュートラルに向けたロードマップを策定し、CO2削減に向けた各種取り組みを着実に進めているため、相対的にコスト負担が軽微となる見込みです。
- ※2018年度Scope1,2排出量×50%(2030年目標):t-CO2e×USD50/t-CO2e × 為替レート
③ 脱炭素や環境負荷低減への対応遅れによる機会損失
CO2排出量削減がロードマップ通りに進まない場合やその他環境負荷が増加する場合、当社グループの社会的信用が低下するリスクが考えられます。また、顧客からの気候変動に関連した要請への対応が遅延することで、販売機会の減少を招く可能性があります。
当社グループは脱炭素に向けた取り組みの着実な推進や個別の顧客要請への対応のみならず、サステナブルカッパー・ビジョンに基づき、CFP(カーボンフットプリント)低減やリサイクル原料比率の向上に向けて技術開発・設備投資に取り組んでいます。また、サステナブルカッパー・ビジョンの実現や浸透に向け、社外とのパートナーシップ構築を進めています。
2. 物理リスク
① 異常気象による設備毀損や操業停止
台風の大型化をはじめとする異常気象により、国内外の生産拠点、サプライヤー・物流網が被災することで、通常の操業が継続できなくなるリスクが高まります。当社グループでは国内主要拠点で、ハザードマップなどを用いた分析を実施し、異常気象による被害のリスクが低いことを確認しました。また、事業継続計画(BCP)を策定した上で、定期的な訓練と見直しを行い、事業継続マネジメント(BCM)の構築を進めています。これらにより、異常気象による設備毀損や操業停止のリスクが具体化したとしても事業への影響を相対的に軽微に抑えることができると考えています。
3. 機会
① 脱炭素社会に必要な銅需要の増大【ベース事業】
脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーやモビリティの電動化ニーズが大幅に増加すると予想され、これら分野では銅がより多く使用されます。こうした伸びゆく需要は、当社グループのさらなる販売や収益増の機会になることが期待されます。当社グループは、ポートフォリオの見直しを通じて事業の強靭化を図るとともに、安定供給体制の確立に向け、銅精鉱とリサイクル原料双方を活用する「グリーンハイブリッド製錬」におけるリサイクル原料の投入比率の向上とCFPの削減に向けた各種施策に取り組んでいます。
こうした取り組みで実現するリサイクル原料比率が高く、かつCFPが低い電気銅や電子材料の供給は、資源循環型社会の実現だけでなく、当社の事業競争力の強化にも資するものです。
② ハイエンドな電子材料の需要増大【フォーカス事業】
気候変動対応として、IoT、AI、5G・6G等を用いてエネルギー利用効率を大幅に改善することが不可欠です。これらの分野にはハイエンドな電子材料が多数使用され、その需要は今後も拡大を続ける見込みです。当社グループはスパッタリングターゲットやFPC用圧延銅箔をはじめとする電子材料分野で高い世界シェアを持つ製品群を抱えています。
現在、旺盛な需要に応えるべく複数の新工場建設や能力増強を進めるとともに、さらなる需要の増加を見据えて、茨城県ひたちなか市および米国アリゾナ州メサ市での新工場建設を進めています。これらの設備投資に加えて、より長期的な視点から技術戦略部を中心に産学連携やスタートアップ投資などを通じたオープンイノベーションに取り組んでいます。
③ 資源循環型社会の実現
脱炭素社会の実現に向け、銅の需要は長期的に拡大していく一方、既存鉱山からの銅鉱石やリサイクル原料の供給には制限があります。
当社の策定したサステナブルカッパー・ビジョンは、銅鉱石とリサイクル原料双方を活用する「グリーンハイブリッド製錬」を通じて、拡大する銅需要を支える安定供給体制を構築することを目指すものです。サステナブルカッパーの進化と普及に向けたその施策の一つとして、リサイクル原料比率(原料投入比率もしくは製品中の含有比率)を2040年に50%以上にまで高めるべく技術開発に取り組んでいます。そのためにはリサイクル原料の集荷・処理体制の拡充が不可欠であり、設備投資やM&Aによるサプライチェーン強化のみならず、サステナブルカッパーの普及に向けて協働いただける企業、自治体、大学や研究機関とのパートナーシップ(Green
Enabling
Partnership)の構築を通じて、パートナーとの製品・スクラップ回収、原料再利用や共同技術開発を進めていきます。
自社のみならず、パートナーの有するグローバルなネットワーク・知見を活用することにより、リサイクル原料の集荷強化、国内外リサイクラーと協働したリサイクルプロセス変革とデジタル化を推進します。
④ 車載用LiBのリサイクル需要の増加や義務化
脱炭素社会の姿の一つとして、電気自動車(EV)の普及が見込まれています。これによりEVに搭載されるリチウムイオン電池(LiB)に用いられるリチウム、コバルトやニッケルの需要が増加します。また、これらの資源を巡る地政学リスクや資源ナショナリズムの高まりが懸念されています。さらに、将来的にはLiBの大量廃棄も予想されることから、LiBの効率的なリサイクルが求められています。
当社グループでは、廃棄された車載用LiBから、これらの金属を車載用電池材料の状態で抽出する「クローズドループ・リサイクル」の実現を目指して、技術開発・実証実験やサプライチェーン全体での資源循環システムの構築に取り組んでいます。
CO2排出量の現状
CO2排出量(Scope1,2)の削減
JX金属グループ Scope1,2排出量の推移

2030年度・2050年度のCO2自社総排出量削減目標に向けて、CO2フリーの電力導入、再生可能エネルギーの創出、エネルギーロスゼロ化活動の推進、脱炭素に向けた燃料転換や技術開発等に取り組んでいます。2023年度のCO2自社排出量(Scope1,2合計)は718千t- CO2となりました。
CO2排出量(Scope3)の算定
Scope1,2,3排出量(2023年度実績)

- ※Scope3の算定基準等についての詳細は、こちらをご確認ください。
当社グループでは、CO2排出量について従来のScope1,2に加えて、当社の事業や製品全体で生じるCO2排出量を把握するため、間接的な排出量であるScope3の算定に2021年度から着手しました。現在、各カテゴリの算出方法や精度の向上・改善のほか、排出量削減のロードマップ策定とその実行に向けた検討をしています。
Scope3のカテゴリ分類
❶購入した製品・サービス、❷資本財、❸Scope1,2に含まれない燃料およびエネルギー活動、❹輸送、配送(上流)、❺事業から出る廃棄物、❻出張、❼雇用者の通勤、❽リース資産(上流)、❾輸送、配送(下流)、❿販売した製品の加工、⓫販売した製品の使用、⓬販売した製品の廃棄、⓭リース資産(下流)、⓮フランチャイズ、⓯投資
磯原工場に通勤用EVバスを導入

023年10月にScope3排出量削減の一環として磯原工場(茨城県北茨城市)において新たにEVバスを導入しました。
磯原工場の立地する茨城県の県北地域はマイカー通勤が主流となっているエリアです。当社では、通勤時のCO2排出量削減や周辺道路の渋滞緩和を目的にマイカー通勤者の公共交通機関利用を促しており、2023年4月からは、通勤時にJR常磐線の特急料金を支給する施策の導入を行いました。今般、磯原工場の最寄り駅であるJR磯原駅と磯原工場間の移動手段としてEVバスを導入することにより、通勤時のCO2排出の削減を進めています。通勤需要の増大を受けて、2024年4月には同型のEVバスを増車し、現在は2台体制で運行しています。
こうした取り組みによりScope3カテゴリ7に該当するCO2を削減することにつながりました。このほか、当バスは通勤以外でも工場へ来場されたお客様の送迎用としても利用されており、今後は地域イベントでの利活用など、工場内外のさまざまなシーンでの積極的な活用を検討していきます。
ネットゼロ達成に向けた取り組み事例
取り組み事例①
カーボンフリー委員会の活動■ 脱炭素ビジョンの実現に向けた各事業所の取り組み
事業所 | テーマ【進捗】 |
---|---|
磯原工場 | 蒸気生成の電化 【設備仕様や設置スペース検討】 |
倉見工場 | 都市ガスの水素やアンモニア代替 【外部機関や企業との協業検討】 |
JX金属製錬(株)佐賀関製錬所 日立事業所 | CO2回収・利用(CCUS) 【CO2濃度測定、CO2回収の協業先、装置仕様や設置スペースの検討】 |
春日鉱山(株) | 重機の脱炭素化 【電動重機の調査、軽油代替のバイオ燃料試験】 |
CO2ネットゼロに向けた全社方針、具体的な施策の協議・決定を行う組織として2022年度に「カーボンフリー委員会」を発足しました。同委員会では、ESG推進部を中心に、各事業部、生産拠点の幹部、技術本部、グループ各社の経営層が委員として参加しています。発足以来、CO2ネットゼロに向けて全社的・戦略的な観点から、事業競争力・付加価値向上に資する脱炭素・資源循環施策を検討しており、「カーボンニュートラル工場(生産拠点のScope1およびScope2ネットゼロ化)」の早期実現をテーマとし、活動を加速しています。具体的には、蒸気ボイラーの電化、都市ガス代替としての水素・アンモニア活用、バイオ燃料の早期導入、CO2回収・利用設備の導入などの検討を進めています。
また、カーボンフリー委員会ではこれら施策に加えて、Scope3のCO2削減にも取り組み、JX金属グループの脱炭素ビジョンの実現にまい進しています。
取り組み事例②
電力の脱炭素化の取り組み■ 再生可能エネルギー設備と総発電量(2023年度)
(千kWh)
拠点 | 発電方法 | 発電量 |
---|---|---|
当社 柿の沢発電所 | 水力 | 23,336 |
当社 倉見工場(オフサイト) | 太陽光 | 6,142 |
当社 倉見工場 | 太陽光 | 25 |
当社 磯原工場 | 太陽光 | 280 |
東邦チタニウム(株)若松工場 | 太陽光 | 367 |
台湾日鉱金属股份有限公司 | 太陽光 | 218 |
日鉱金属(蘇州)有限公司 | 太陽光 | 66 |
JX Metals Korea Co., Ltd. | 太陽光 | 146 |
日本鋳銅株式会社 | 太陽光 | 6 |
当社グループのCO2自社総排出量(Scope1,2)の約6割は電力に由来するため、2020年度よりCO2フリー電力※1の導入を開始しました。2023年度は、国内、海外の多くの拠点でCO2フリー電力への切り替えを完了しています。
また、自社での再生可能エネルギー創出にも取り組んでいます。これまでも国内外事業所で水力、太陽光発電設備を導入してきましたが、2023年4月には、倉見工場でオフサイトPPAモデル※2による太陽光発電の導入を行いました。工場の敷地外に設置するオフサイト型についてはグループで初となります。発電規模は太陽光パネルベースで約9,000kWで、単一の事業所向けのオフサイトPPAモデルによる太陽光発電としては国内最大級の規模となります。
2024年4月にはJX金属苫小牧ケミカル(株)で当社グループ最大規模となるオンサイトPPA太陽光発電を開始しました。同社はリサイクル事業を行っており、事業所の遊休地を有効活用して創出した再生可能エネルギーを使用して、資源循環に貢献しています。
- ※1CO2フリー電力:化石燃料等を用いずCO2を排出しない実質非化石電源に由来する電力で、調整後CO2排出係数が0.00t-CO2/kWhとなるもの。水力や風力、太陽光などの再生可能エネルギー電力のほかに原子力発電が含まれる場合もある
- ※2PPA:Power Purchase Agreement(電力販売契約)の略。企業など施設所有者が提供する敷地や屋根などのスペースを貸し、電力会社が太陽光発電システムを設置して、発電された電力を施設所有者が利用して料金を支払う仕組み

取り組み事例③
エネルギーロスゼロ化活動の推進電力多消費型の事業を営む当社グループでは、これまでも事業活動のあらゆるステージで省エネ活動を推進してきましたが、CO2ネットゼロの達成に向けて、新たな切り口によるエネルギーロスゼロ化活動の推進が必要と考えています。例えば、コスト削減軸を超えたCO2削減軸による設備更新や、設備運用方法の抜本的見直しなど、省エネ推進部会が中心となってエネルギーロスゼロ化に挑戦しています。
取り組み事例④
脱炭素に向けた燃料転換や技術開発- ※1今回の実証実験では国際持続可能性カーボン認証(ISCC:International Sustainability & Carbon Certification)を受けたバイオディーゼル燃料であるFAME(脂肪酸メチルエステル)を約24%、低硫黄重油(VLSFO)に混合したものを使用
- ※2銅を製錬する過程で発生する副産物であり、CO2負荷が低く、セメント用原料やサンドブラスト材料として再資源化されている
- ※3燃料の生産・輸送・船舶での使用に至るまでの過程を意味し、燃料消費サイクルの全体で生じた排出量を指す
- ※4今回の実証試験ではHVO(水素化植物油)を約20%、軽油に混同したものを使用

当社グループの事業プロセスでは、電力以外のエネルギー源として重油、還元剤としてのコークス等を利用しており、これらからのCO2排出についても削減に取り組んでいます。その候補の一つが燃料転換で、産業界では水素やアンモニアなど新たな燃料の技術開発が進んでいますが、当社でもこれらの利用を検討しています。
2023年にはグループ会社のパンパシフィック・カッパー(株)、飯野海運(株)と国内非鉄金属業界では初となるバイオディーゼル燃料※1を利用した銅スラグ※2の海上輸送に関する実証試験を行い、予定通り9月10日に航海を完了しました。本航海では、パンパシフィック・カッパー(株)が取り扱う銅スラグを日本国内の製錬所からマレーシアまで、飯野海運が運航する貨物船「Bright
Hope」に積載し、廃食油や再生可能油脂から精製されたバイオディーゼル燃料を用いて輸送しました。このバイオディーゼル燃料の使用は、Well to
Wake“生産井から航海まで”※3において発生する温室効果ガス排出量削減に寄与します。
2024年5月には春日鉱山(株)で使用する自家発電設備の燃料(軽油)にバイオ燃料※4を混合させる実証試験を開始しました。実証試験の結果を踏まえて、同社で使用する重機への適用やバイオ燃料100%での操業を検討していきます。同社で生産している硅酸鉱はJX金属製錬(株)佐賀関製錬所で使用されており、同社のCO2削減のみならず、電気銅のカーボンフットプリント(CFP)低減にも寄与します。
取り組み事例⑤
国内非鉄金属業界で初となるトランジション・リンク・ローン・フレームワークを策定
現在、GHG多排出産業による長期的なトランジション戦略の遂行を後押しする仕組みとして「トランジション・リンク・ローン(TLL)」への期待が高まっており、国内外でルールの整備が進められています。
当社グループは、2022年6月、国内非鉄金属業界として初めて、「トランジション・リンク・ローン・フレームワーク(TLLF)」を(株)みずほ銀行の支援を受けて策定しました。また、策定したフレームワークに基づき、2022年6月に(株)常陽銀行との間でTLLの契約を締結しました。これは国内非鉄業界におけるTLLの第1号案件となります。
取り組み事例⑥
GXリーグへの本格的な参画
経済産業省が主導するGXリーグは、2050年カーボンニュートラル実現を見据えてGX(グリーントランスフォーメーション)ヘの挑戦を行い、経済社会システム全体の変革を目指して産・官・学が協働する枠組みです。当社はGXに向けた活動を推進していることから、「GXリーグ基本構想」への賛同を表明しました。
また、2023年度から2025年度の「第1フェーズ」にも参画を表明しています。「第1フェーズ」では、「未来社会像対話の場」「市場ルール形成の場」「自主的な排出量取引」の3つの取り組みの実証、対話が行われています。当社もGXの実現に向けて積極的なディスカッションや情報交換を行っていきます。
取り組み事例⑦
インターナルカーボンプライシングの導入
当社グループは2021~2022年度の2年間において「ESG投資枠」制度を運用しました。同制度では、製造現場主導型のESG投資(CO2排出量削減、資源循環促進や省エネ促進等に資する投資)を後押しすることを主眼とし、インターナルカーボンプライシングの考え方を導入しました。社内で広くアイデアを募集した結果、約50件、総額数十億円規模のESG関連投資を実行するに至っています。
当社グループでは、ボトムアップ型のESG投資が一定程度、進捗・一巡した認識のもと、前述の「カーボンフリー委員会」で定めた「カーボンニュートラル工場」の早期実現に向けて、全社目線によるESG投資に向けた技術調査・アイデア集約・優先度評価に取り組んでいます。