コーポレート・ガバナンス

当社は、当社グループ全体でコーポレートガバナンスの強化に取り組むことにより、経営の健全性と透明性を高め、経営基盤の強化、維持に資することを通じて、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図り、株主をはじめとするステークホルダーへの責任を果たします。

コーポレート・ガバナンス体制強化の変遷

当社は、2023年5月に東京証券取引所への株式上場準備の開始について発表を行い、以降コーポレート·ガバナンス体制の一層の強化に向けた対応を進めてきました。まず、2023年6月に監査等委員会設置会社に機関設計を変更し、さらには代表取締役社長に対する重要な業務執行の決定の一部の委任および取締役会付議基準の見直しを行い、重要なテーマに対する取締役会での議論の充実や、役員トレーニング·会社理解のための機会の充実を図りつつ、業務執行の機動性·迅速性をより一層高めることとしました。
また、2023年11月には指名·報酬諮問委員会を設置し、サクセッションプランの検討、スキル·マトリックスの策定、独立性判断基準の制定等といった指名に関する事項や、株式報酬制度の導入を含めた役員報酬制度の見直しといった報酬に関する事項について、十分な議論の上で取り纏めました。
さらに、当社グループのコーポレート·ガバナンスに関する基本方針の制定や、取締役会の実効性の評価、政策保有株式の保有意義検証など、ガバナンス全般について対応を進めました。
これらの体制強化を行ったうえで、2024年10月に東京証券取引所へ新規上場申請を行い、審査の結果、独立性の確保を含めてガバナンス体制が適切に構築されているとして、2025年2月、最も厳格な水準が求められるプライム市場への新規上場が承認されました。その後、機関投資家等からも、成長戦略のコアとして位置付けるフォーカス事業について、将来性がある市場においてグローバルトップシェア製品を多数有すると評価されるとともに、旧来の枠にとらわれない考え方で事業ポートフォリオ改革を推進した実行力のあるマネジメント体制が評価され、2025年3月、新規上場を果たしました。

コーポレート・ガバナンス体制
取締役会
  1. 取締役の責務
    取締役は、株主をはじめとするステークホルダーとの適切な協働を確保しつつ、株主共同の利益のために、当社の持続的な成長および中長期的な企業価値の向上に努めます。
  2. 取締役会の役割
    取締役会は、法令および定款に定められた事項、その他経営上の重要事項を審議するとともに、業務執行の状況の監督機能を担います。
  3. 取締役会の構成
    取締役会は、活発で建設的な議論・意見交換ができる適切な員数を維持し、その役割・責務を実効的に果たすための知識・経験・能力を全体としてバランス良く備え、多様性にも配慮し、メンバーを構成します。また、取締役のうち3分の1以上を独立した社外取締役として選任し、より透明性の高い経営を目指します。
    なお、現在においては、監査等委員でない取締役6名(男性5名、女性1名)および監査等委員である取締役5名(男性4名、女性1名)の11名で構成されています。また、取締役会内部の相互監督機能の一層の強化を図る目的で、独立社外取締役を5名(監査等委員でない取締役2名、監査等委員である取締役3名)選任しています。
  4. 取締役会の運営
    取締役会は、定時取締役会に加えて、臨時取締役会を必要に応じ開催し、機動的な意思決定をなし得る体制を整えます。重要な業務執行の決定および業務執行の状況の監督のために必要かつ十分な議論を可能とするため、取締役会の議題および審議時間を適切に設定するとともに、議題表および審議資料は、事前に取締役に提供します。
    取締役会は原則月1回定例で開催しますが、2024年度においては、臨時取締役会を含め合計26回開催いたしました。
  5. 取締役会および取締役の情報入手等
    取締役会における活発で建設的な議論・意見交換を実現するため、取締役会事務局は取締役および取締役会に対する適切な支援を行います。また、取締役は、その役割および責務を果たすために、必要があるときは会社に対して追加の情報提供を求めることができるものとします。
  6. 取締役会の実効性評価
    当社の取締役会は、毎年、各取締役の自己評価等も参考にしつつ、取締役会の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示することとしています。
    1. 評価のプロセス
      2025年2月に当社の全取締役11名を対象にアンケート(対象年度:2024年度)を実施しました。アンケートの配布・回収、回答の集計および分析を外部機関に委託し、当該外部機関による集計結果および分析結果も踏まえ、2025年5月に当社取締役会は、取締役会の実効性について評価し、今後の対応方針を確認しました。なお、アンケートにおける主な評価項目は次のとおりです。
      [評価項目]
      ①取締役会の役割・規模・構成 ②取締役会の運営 ③監査機関との連携 ④社外取締役との関係 ⑤前回の課題への対応
    2. 評価結果の概要
      当社の取締役会は、アンケートの各評価項目について概ね肯定的な評価が得られ、対象年度において、取締役会が適切な回数、頻度、出席率で実施されたこと、多様性を有するメンバーにより重要テーマについて活発な議論が行われたこと、「重要な業務執行の決定」の一部の代表取締役社長への委任および取締役会付議基準の見直しを行い、取締役会での審議の充実等が可能となる体制が整備されたこと、社外取締役の会社理解の深化のために次の施策が適切に実施されていること、および前年度の課題についても適切に対応し一定の改善が見られたことなどを確認した上で、取締役会における審議の結果、当社の取締役会の実効性は確保されていると評価しました。
      (社外取締役の会社理解の深化のための施策)
      • 取締役会の重要議題(付議議案等)に関する社外取締役に対する事前説明
      • 社外取締役による主要拠点の現地視察
      • 取締役会以外の重要な会議体への社外取締役の参加
      一方で、取締役会における重要テーマに関する議論の一層の充実、役員トレーニングの一層の充実等を引き続き主な課題として認識しており、今後改善に向けた具体的な取り組みを検討し、継続的に実施することで、取締役会の更なる実効性向上を図ります。
監査等委員会
  1. 監査等委員会の役割
    監査等委員会は、監査等委員が取締役としてそれぞれ有する取締役会における議決権の行使および監査等委員でない取締役の人事・報酬に関する意見陳述権の行使を通じて、業務執行の状況の監督を行います。また、各監査等委員は、経営の健全性の確保および当社の企業価値の向上を図るため、監査等委員会が定めた監査の方針、監査計画等に従い、取締役会その他の重要な会議に出席し、取締役、執行役員および使用人等からその職務の執行状況について報告を受け、必要に応じて説明を求め、重要な決裁書類等を閲覧し、本社および主要な拠点において業務及び財産の状況を調査します。
  2. 監査等委員会の構成
    監査等委員会は、その委員の過半数を、豊富な知識・経験に加え、強固な独立性を有する社外取締役である監査等委員で構成します。また、監査等委員会には財務・会計・法務に関する知識を有する委員が含まれるものとします。
    なお、現在においては、4名の社外取締役を含む監査等委員である取締役5名(男性4名、女性1名)で監査等委員会を構成しています。
  3. 監査等委員会の実効性の確保
    監査等委員会の職務を補助する専担の組織を設置します。また、会計監査人や内部監査部門から監査計画および各監査結果につき定期的に報告を受けるとともに、意見・情報の交換を行うなどの連携を図ります。この点、常勤の取締役である常勤監査等委員が経営会議や各種委員会等の重要な会議に出席し、財務報告や職務の執行状況の妥当性等を確認の上、監査の有効性を保つように努めています。監査等委員会は、原則として毎月1回開催されており、議長は、常勤監査等委員が務めています。
指名・報酬諮問委員会
  1. 指名・報酬諮問委員会の役割
    当社は、当社の取締役の指名・報酬等に係る手続の客観性・透明性を強化し、コーポレートガバナンスの充実を図るため、取締役会の諮問機関として、指名・報酬諮問委員会を設置しています。指名・報酬諮問委員会は、取締役会の諮問に基づき、以下の事項を審議の上、取締役会に答申します。
    • 当社の取締役の人事案(選解任を含む。)
    • 当社の取締役・執行役員の報酬決定方針、報酬制度
    • 当社の社長の後継者計画
    • その他、当社の取締役の選解任・役員報酬に関連する重要事項
  2. 指名・報酬諮問委員会の構成
    指名・報酬諮問委員会は、取締役会の諮問機関として、独立社外取締役が過半数を占め、かつ議長を務めます。なお、指名・報酬諮問委員会には、監査等委員会が株主総会において監査等委員でない取締役の指名・報酬に関する意見陳述権を的確に行使できるよう、常勤監査等委員の出席を認めています。
    指名・報酬諮問委員会は、審議すべき事項が生じた際に開催され、2024年度においては合計8回開催いたしました。
執行役員・経営会議

当社は、取締役会の決定に基づき機動的に業務を執行する機関として、執行役員を置いています。また、社長の諮問機関として当社経営上の重要事項について協議を行うとともに、業務執行状況などに関する報告および連絡を行うため、社長および社長が指名した執行役員により構成された経営会議を設置しています。なお、常勤監査等委員は、経営会議に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べることができます。

監査部による監査

当社は、内部監査部門として他部門から独立した社長直轄の組織である監査部を設置し、内部監査を実施しています。内部監査はJX金属グループ全体を対象とし、内部監査計画に基づく通常監査、年次監査および社長の特別な命により実施する特命監査を行うこととしています。また、内部監査の結果については、当社社長への報告に加え、定期的に経営会議および監査等委員会に報告しています。さらに、上場子会社における当該社の監査部門による内部監査の結果についても、定期的に情報の提供を受けております。

会計監査人

当社は、会計監査人として、EY新日本有限責任監査法人を選任しています。継続監査期間、業務を執行した公認会計士の氏名、および監査業務に係る補助者構成は次のとおりです。

  • 継続監査期間
    2003年3月期以降
  • 業務を執行した公認会計士の氏名
    指定有限責任社員 業務執行社員:山岸 聡、稻吉 崇、脇野 守

業務執行社員のローテーションは適切に実施されており、連続して7会計年度を超えて監査業務に関与していません。また、筆頭業務執行社員については、連続して5会計年度を超えて監査業務に関与していません。

  • 監査業務に係る補助者構成
    公認会計士23名、その他42名
社外取締役
  1. 社外取締役の役割・機能
    当社は、コーポレートガバナンス、内部統制強化の社会的要請の高まりの中、外部の視点によるチェック機能に加え、新しい視点からの判断等を取り入れるべく、社外取締役を登用しています。2025年6月末現在、取締役11名のうち6名(監査等委員でない取締役2名、監査等委員である取締役4名)を社外取締役としています。
  2. 独立性判断基準
    当社は、独立社外取締役の独立性を実質面において担保するため、東京証券取引所が定める独立性基準を踏まえて独立社外取締役の独立性判断基準を策定・開示しています。
    独立社外取締役の独立性判断基準

    当社は、次の要件を満たす社外取締役を、一般株主と利益相反が生じるおそれのない独立役員と判断する。

    1. 1.社外取締役が、次に該当する者でないこと
      1. 当社の主要な取引先(注1)又はその業務執行者
      2. 当社を主要な取引先とする事業者(注2)又はその業務執行者
      3. 当社の主要な借入先(注3)又はその業務執行者
      4. 当社から役員報酬以外に多額の報酬を得ている法律専門家、会計専門家又はコンサルタント(注4)(当該報酬を得ている者が法人、組合その他の団体である場合は、当該団体に所属する法律専門家、会計専門家又はコンサルタント。(5)に該当する者を除く。)
      5. 当社の会計監査人又は会計監査人である監査法人に所属する公認会計士
      6. 当社から多額の寄付を得ている者(注5)(当該寄付を得ている者が法人、組合その他の団体である場合は、当該団体の業務を運営する者)
      7. 当社の大株主(注6)又はその業務執行者
      1. 直近の過去3事業年度のいずれかの年度における当該取引先に対する当社の売上高が当社の連結売上高の2%を超える顧客とする。
      2. 直近の過去3事業年度のいずれかの年度における当社に対する当該事業者の売上高が当該事業者の連結売上高の2%又は1,000万円のいずれか高い方の額を超える事業者とする。
      3. 直近の過去3事業年度のいずれかの年度末日における当該借入先からの借入額が当社連結総資産の2%を超える借入先とする。
      4. 直近の過去3事業年度のいずれかの年度における当社からの報酬の合計額が1,000万円を超える者(団体の場合には、当該団体の過去3事業年度のいずれかの年度における当社からの報酬の額が当該団体の売上高の2%又は1,000万円のいずれか高い方の額を超える団体に所属する者)とする。
      5. 直近の過去3事業年度のいずれかの年度における当社からの寄付金の合計額が1,000万円を超える者(団体の場合には、当該団体の過去3事業年度のいずれかの年度における当社からの寄付の合計額が当該団体の収入総額の2%又は1,000万円のいずれか高い方の額を超える団体に所属する者)とする。
      6. 当社の議決権総数の10%以上の議決権を有する者とする。
    2. 2.社外取締役の二親等以内の親族が、現在及び直近の過去3年間において、次に該当する者でないこと(重要でない者を除く。)
      1. 当社又は当社の子会社の業務執行者
      2. 上記1.(1)~(7)に該当する者
    3. 3.上記1及び2にかかわらず、その他、当社と利益相反関係が生じ得る事由が存在すると認められる者でないこと
    4. 以上

  3. 社外取締役への支援体制
    社外取締役がその役割や責務を実効的に果たすため、以下のとおり必要な支援を実施します。
    ①取締役会の審議の充実のため、社外取締役に対し、取締役会の主要議題に関して事前説明を実施します。
    ②社外取締役の事業に対する理解を深めるため、社外取締役が当社グループの拠点を視察する機会を設定します。
    ③独立社外取締役が取締役会の議題その他当社グループの経営に関する情報を収集し、独立社外取締役同士で意見交換・認識共有を図ることを目的として、独立社外取締役のみを構成員とする会議を開催します。
グループ会社の管理

グループ会社については、各社の事業に応じて、当社の事業部門・技術部門・コーポレート部門を所管部署として定め、業務執行の管理・監督を行っています。グループ会社における経営上の重要事項については、所管部署を通じて当社に報告され、適宜、当社の取締役会、経営会議などの重要会議に付議・報告されます。

取締役候補者の指名および経営陣幹部の選解任の方針と手続き

取締役候補者・経営陣幹部の指名においては、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、経営に対する実効性のある監督を行うことができる人材であるかという観点、経営陣幹部の選任においては、重要な業務執行について迅速かつ果敢な意思決定を行うことができる人材であるかという観点をそれぞれ重視しつつ、各人の保有する実績・経験・スキル・知識、能力および資質等を総合的に考慮し適当と考えられ、かつ、心身ともに健康で高度なインテグリティを兼ね備えた人材を、指名・報酬諮問委員会の審議を経た上で、取締役会決議により指名・選任しています。特に、取締役候補者の指名にあたっては、当社のスキル・マトリックスを踏まえ、取締役会全体として備えるべき知識・経験・能力のバランスを考慮するとともに、多様かつ忌憚のない意見交換を促進し、もって取締役会の実効性の向上を図るべく、多様性と適正な員数とのバランスを考慮しており、経営陣幹部の選任にあたっては、当社グループおよびその事業に関する深い理解および専門的な知識・経験を重視しています。
また、監査等委員である取締役の候補者としては、前述の方針に加え、取締役の職務の執行に対する監査・監督を担う役割期待に鑑み必要と考えられる実績・経験・スキル・知識、能力および資質等(特に、財務・会計・法務に関する知識・経験を重視します)を備える人材を指名しています。監査等委員である取締役候補者の指名にあたっては、財務・会計に関する十分な知見を有する者が原則として1名以上含まれるよう、監査等委員会全体としての知識・経験・能力のバランスを考慮しています。
さらに、社外取締役候補者としては、前述の方針に加え、独立した客観的な立場から経営の監督を行うという役割期待に鑑み必要と考えられる実績・経験・スキル・知識、能力及び資質等を備えており、東京証券取引所の定める独立性基準および当社が独自に策定した独立社外取締役の独立性判断基準に基づき、独立性に問題がないと判断した人材を指名しています。
なお、経営陣幹部において、当社選任方針に定める事項への不適合が生じた場合、法令・定款等に対する違反が生じた場合、その他職務の執行に著しい支障が生じた場合等には、その解任に関する事項について、指名・報酬諮問委員会において審議の上、取締役会にて決議することとしています。

スキル・マトリックス

当社は、2019年6月に策定(2023年5月に一部改定)したJX金属グループ2040年長期ビジョン等を踏まえ、取締役会全体が備えるべきスキルを特定しています。現時点での取締役会全体としての知識・経験・能力のバランスは、以下のとおりです。

役職 氏名 企業経営・
事業運営
グローバル 技術・R&D サステナビリティ・ESG 人材・
人事戦略
財務・会計 法務・
リスク管理
代表取締役会長 村山 誠一
代表取締役社長
社長執行役員
林 陽一
取締役
副社長執行役員
菅原 静郎
太内 義明
社外取締役 所 千晴
伊藤 元重
取締役
(常勤監査等委員)
黒岩 源洋
社外取締役
(監査等委員)
佐久間 総一郎
二宮 雅也
川口 里香
塩田 智夫

役員報酬

当社は、東京証券取引所プライム市場への新規上場を機に、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図り、株主をはじめとするステークホルダーへの責任を果たすことができる役員報酬制度とすべく、指名·報酬諮問委員会での審議を経た上で、取締役会において検討を進めてきました。
上場時点においては、役員報酬は、固定報酬と短期業績連動報酬にて構成していましたが、2025年6月27日開催の定時株主総会において、長期連動報酬としての株式報酬制度の導入を決議しています。これは、役員の業績への貢献意識をさらに高めるためには、報酬全体に占める業績連動型報酬の構成比率を高めることが相当であり、また、役員報酬と当社の業績および株式価値との連動性をより明確にし、株主との価値共有を一層強化することにより、中長期的な業績の向上と企業価値の増大に貢献する意識を高めることが相当と判断したためです。
なお、長期業績連動報酬として交付する当社株式については、対象となる役員との間で、退任までの間の譲渡制限契約を締結し、対象役員が①譲渡制限契約に違反して株式の全部または一部の譲渡等をしようとした場合、②一定の非違行為に起因して当社の役員を解任され、または辞任する場合等においては、株式の全部を無償で当社が取得することとしています。

当社役員報酬の構成比率

固定報酬(金銭)
固定報酬は、常勤·非常勤の別、取締役·執行役員の役位および職責等を総合的に勘案して役位ごとの年額を決定し、月割りで毎月支給します。
監査等委員でない社外取締役の報酬等は、業務執行の状況を監督するというその職責を十全に果たせるよう、また、監査等委員である取締役の報酬等についても、業務執行の状況を監督し、また監査するというその職責を十全に果たせるよう、いずれも固定報酬のみにより構成しています。

短期業績連動報酬(金銭)
短期業績連動報酬は、単年度の期間業績等(全社業績)に係る業績指標および個人別に設定した事業目標に対する達成度(個人評価)に連動する報酬であり、目標の達成度に応じて0%から200%の比率で変動し、目標を達成した場合に100%となるように設計しています。

業績指標 評価ウェイト 選定理由
連結営業利益 50%(40%) 収益性の向上に対するインセンティブを強化
Net Debt / EBITDA倍率 50%(40%) 財務健全性の改善に対するインセンティブを強化
個人評価 ―(20%) 個々の職責に応じたミッションに鑑み、その達成度合いを評価
  • 括弧内は、代表取締役以外の取締役に適用される評価ウェイト。代表取締役については、全社業績に最終責任を負う立場であることに鑑み、個人評価に連動する部分は設けていません。
  • 連結営業利益が赤字になった場合は、短期業績連動報酬全部の支給率は0%。

長期業績連動報酬(株式)
長期業績連動報酬は、役位に応じた所定の数の株式が支給される固定部分と、一定期間の事業目標等の達成状況に連動して支給される株式数が変動する業績連動部分により構成され、業績連動部分は、目標の達成度に応じて0%から190%の比率で変動し、目標を達成した場合に100%となるように設計しています。

業績指標 評価ウェイト 選定理由
財務 連結営業利益30% 30% 収益性·成長性の向上に対するインセンティブを強化
ROE 30% 効率性の改善に対するインセンティブを強化
TSR 30% 株主との価値共有の強化に向け、中長期的な株式価値向上に対するインセンティブを強化
非財務 職場の安全 3% 資本経営の実現の観点より、安心·安全かつ健康的に働ける環境の実現に対するインセンティブを強化
従業員エンゲージメント 3% 人的資本経営の実現の観点より、従業員エンゲージメント向上に対するインセンティブを強化
外部機関によるサステナビリティの総合評価 4% 当社のサステナビリティにかかる推進体制の維持·強化および各種取り組みの着実な実施に対するインセンティブを強化
  • TSRは、評価期間中における「当社TSR÷TOPIX成長率(配当利回り込み)で算定します。

取締役会の実効性向上に向けた取り組み

当社は、取締役に対してその役割や責務を果たす上で必要になる研修を受ける機会を提供します。また、当社は、社外取締役に対して就任時に当社事業に関する基本的事項を説明するとともに、就任後も、当社グループの拠点の視察などを通じて、当社グループへの理解を深めるための機会を提供します。2024年度においては、取締役および執行役員を対象に、東京証券取引所への当社株式の上場に向けたコンプライアンス体制の強化を目的としてインサイダー取引防止に係る研修を実施しました。また、社外取締役の当社グループへの理解を深めるための取り組みとして、取締役会の都度、取締役会の重要議題についての事前説明を継続実施したほか、当社グループの拠点の視察、社外取締役による当社グループ経営会議およびサステナビリティ推進会議へのオブザーブ参加、独立社外取締役のみで構成する社外取締役会議を実施しました。今後も、役員研修制度の整備や、社外取締役による国内外グループ拠点の視察の拡充、取締役会以外の場における重要テーマの議論·重要案件の説明等を継続して実施してまいります。

内部統制システム

当社グループでは、「内部統制システム整備・運用の基本方針」を定め、これに基づき、業務の効率性と適正を確保するための内部統制システムを構築し、当社の各部門より内部統制活動状況に関する報告を受けるとともに、主要グループ会社を対象に内部統制システムの整備・運用状況調査を実施しています。内部統制システムの整備・運用状況については、原則として年1回、経営会議においてモニタリングし、各社の事業特性を勘案しつつ、当社グループ全体としての内部統制システムの継続的な改善を図っています。なお、2024年4月1日付で内部統制部を新設し、業務上のリスクに関する点検の促進、内部統制に関する教育の実施など、当社グループの内部統制活動のさらなる深化に取り組んでいます。

グループガバナンス

当社においては、グループ会社について、各社の事業に応じて、当社の事業部門・技術部門・コーポレート部門を所管部署として定め、業務執行の管理・監督を行っています。グループ会社における経営上の重要事項については、所管部署を通じて当社に報告され、適宜、当社の取締役会、経営会議などの重要会議に付議・報告されます。
なお、当社グループ全体の持続的成長および企業価値向上の観点から、上場子会社および上場関連会社については、各社の自主性を尊重し、独立性を確保するとともに、総合力発揮による当社グループ全体の発展を図るべく、相互に連携および協力をすることを基本方針としています。これらの会社との取引条件については、都度協議·交渉を行ったうえで、他の顧客との一般的な契約条件や市場価格等に基づき合理的に決定しており、少数株主の保護を図っています。なお、当社は、当社の上場子会社および上場関連会社との間において、各社の事業上の制約となる契約を締結していません。
また、グループ全体としての企業価値向上や資本効率性の観点から、上場子会社および上場関連会社として維持することが最適なものであるかを定期的に点検するとともに、その合理的理由や上場子会社および上場関連会社のガバナンス体制の実効性確保について取締役会で審議することを方針としています。上場子会社および上場関連会社における独立した意思決定を確保するため、上場子会社および上場関連会社においては、取締役の3分の1以上を独立社外取締役とする体制とし、当社から取締役を派遣する場合には、両社においてあらかじめ協議の上、双方における必要性並びに派遣先の上場子会社および上場関連会社の健全な意思決定を阻害しないことを確認してからこれを実施するものとしています。
なお、東邦チタニウム株式会社は、当社の上場子会社です。当社は、先端材料など技術による差別化によりグローバル競争で優位に立てる事業をフォーカス事業とし、これを成長戦略のコアと位置付けており、東邦チタニウム株式会社はその競争力を保つために重要な高品質材料のサプライヤーであって、かつ、目まぐるしいスピードで新規技術が社会実装される先端材料分野では、同社との緊密なコラボレーションによる次世代製品群の創出·育成を迅速に行う必要があることから、同社を子会社として維持しています。また、株式会社丸運は、当社の上場関連会社です。同社は、当社の物流関連業務における重要な役割を担う会社であるため、これを関連会社として維持しています。他方、東邦チタニウム株式会社および株式会社丸運とのシナジー効果を最大化し、両社の持続的な成長を図るためには、両社が資本市場から機動的に直接資金調達を行う手段を持つ必要があり、また、同社を上場子会社および上場関連会社として維持することは、同社社員のモチベーション維持·向上および優秀な人材の採用にも資するため、十分な合理性があると考えています。

その他の関係会社について

ENEOSホールディングス株式会社(以下、ENEOSHD)は、当社のその他の関係会社です。ENEOSHDの各事業はセグメントごとの棲み分けがなされており、本報告書提出日現在、当社グループが推進する金属事業の展開に影響を及ぼす競合等は生じておらず、ENEOSグループにおけるそのような意思決定の公表もありません。
また、当社グループは「2040年JX金属グループ長期ビジョン」に基づき半導体材料·情報通信材料のグローバルリーダーとして持続可能な社会の実現に貢献することを基本方針としており、ENEOSグループ内の他のセグメントと競合する事業を営むことは想定していません。
当社グループの経営においては、事前にENEOSHDの承認または協議を要する事項は定めていません。また、当社は取締役11名のうち6名の社外取締役を選任しており、うち5名が独立性判断基準に照らして独立性を有しています。なお、監査等委員である取締役1名はENEOSHDの取締役を兼務していますが、当社は、ENEOSHDに所属する者を取締役として選任するにあたっては、対象者が当社の取締役に就任することが当社のガバナンス体制の強化に資するか検討の上、当該人事案について企業経営の健全性および少数株主保護の観点から支障がないことを指名·報酬諮問委員会に諮問することとしています。以上を踏まえ、当社の経営における自由な意思決定がENEOSHDにより阻害されるおそれはないものと判断しています。
当社は、委員の過半数が独立社外取締役で構成され、かつ独立社外取締役が議長を務める指名·報酬諮問委員会を設立·運営しています。同委員会は当社取締役会の諮問に基づき、当社の取締役の人事案(選解任を含む。)および社長の後継者計画並びに報酬決定方針および報酬制度等、当社の取締役の選解任、役員報酬に関する重要事項を協議しています。
当社は、ENEOSHDとの間に当社の経営事項に関して事業上の制約となる契約を締結していません。

政策保有株式に関する方針

当社は、原則として上場会社の株式を保有しません。ただし、当社グループの重要な事業の一翼を担う会社の株式および株式を保有することが当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資すると判断した会社の株式については政策保有株式として保有します。
例外的に保有する政策保有株式については、当社の取締役会において、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているかを具体的に精査し、保有の適否を定期的に検証するとともに、検証内容を開示します。
政策保有株式の議決権行使については、当該株式を保有する意義·目的を勘案の上、当社グループと発行会社双方の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に資するか否かを基準として、議案ごとにその都度賛否を判断します。当社は、賛否の判断にあたり必要があると判断した場合には、発行会社から示された議案について説明を求めます。また、発行会社の経営環境等の悪化、重大な不祥事、ガバナンス上の懸念等が生じている場合には特に慎重な判断を行います。
当社は、当社の株式を保有する政策保有株主(以下「政策保有株主」といいます。)から当該株式の売却の意向が示された場合、取引の縮減を示唆する等の売却を妨げる行為を行いません。また、当社は、政策保有株主との間においても、取引の経済合理性を十分に検証し、当社および株主共同の利益を害するような取引を行いません。

政策保有株式の推移
2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
保有銘柄数(銘柄) 3 3 3
保有株式数合計(株) 1,314,782 1,314,782 1,314,782
貸借対照表計上額(百万円) 2,777 4,939 7,608
純資産に占める割合(%) 0.46 0.69 1.07

内部監査の実施

当社グループでは、グループ全体を対象範囲として、経営管理、リスク管理、統制活動および関連する諸活動の状況等を、有効性・効率性の観点から公正かつ独立の立場で調査・検討・評価し、その結果に基づく情報の提供・改善への提言を行う内部監査を実施しており、その主管部として監査部を設置しています。
当社監査部は、グループベースでの適切な内部監査体制を構築するため、概ね3年程度の中期における計画および各年度の計画を策定し、これに基づいて内部監査を実施しています。またグループ会社を対象に毎年度実施する監査は、当社からグループ会社に派遣されている監査役とも連携・協力し行っています。
監査の結果、必要に応じて対象組織に対する改善提言がなされ、その対応状況のフォローアップが行われます。また内部監査の結果等は、当社社長に報告され、定期的に経営会議および監査等委員会にも報告されます。