開発のための体制構築と開発人材の育成

開発のための体制構築と開発人材の育成

当社グループでは、生産や開発分野でのDX対応や新規開発アイデア創出のプラットフォーム整備、開発プロセス管理の強化等を進め、脱炭素技術など革新的な技術や製品を継続的に生み出す仕組みの構築を進めています。加えて、当社の技術開発や技術立脚型の事業開発を担う人材の育成も進めています。

新規事業・技術開発の社内プロセスの強化

当社では、事業開発の管理体制として「ステージゲートプロセス」を導入しています。また、学びと挑戦のプラットフォームとして、「Idea Seed Bank」を設置しています。こうした取り組みは、全社的な技術戦略の企画・立案を行う専門部署である「技術戦略部」が担当しています。

ステージゲートプロセスの導入

新規開発テーマの推進にあたり、当社では開発プロセスを複数のステージに分割して審査を行う「ステージゲートプロセス」 を導入し、新規製品・技術における中長期テーマの探索から事業化に向けた活動を行っています。このステージゲートプロセスを有効に機能させることにより、脱炭素技術など革新的な技術や製品を継続的に生み出す活動を推進しています。

アイデア創出のためのプラットフォーム整備

技術戦略部の取組みの一つである「Idea Seed Bank(ISB)」は学びと挑戦のプラットフォームとして、共に挑戦する仲間づくり・アイデア発想・提案に向けた支援、多様なメンバーで意見を出し合いアイデアを磨き育成していくことを行っています。2024年2月にはISBに提案されたアイデアが関連部門のテーマになる事例も生まれました。またアイデア発想のみならず、特定のテーマで有志が対話し相互の学びを深めるコミュニティも立ち上がり、事業所や所属部署や拠点を超えた交流の場にもなっています。参加する社員はコミュニティから刺激を受けながら学びを深め、アイデアの創出・提案・実現に取り組んでいます。

社内風土の醸成および人材育成

技術戦略部ではIdea Seed Bankによるチャレンジを促す社内風土醸成のほか、当社グループの一人ひとりが自分の担当以外の製品や当社について理解し、その上で部門を超えた事業部間の連携を促すための取り組みとして、横串勉強会を実施しています。横串勉強会では、各事業部の事業内容や製品・サービスについて全社員が学び、活発な質疑応答やディスカッションを行うことで、それぞれが当社グループのことをよく理解し、結果的に社外とのコミュニケーションの幅を広げることにつながっています。こうした取り組みにより、共創パートナー候補の発掘、新規開発テーマの探索、既存事業のさらなる拡大において活躍できる人材の育成を進めています。

VOICE
ISBメンバーの声
JX金属(株)
プロジェクト推進本部 企画管理グループ
ひたちなか事務所
七宝 璃彩子

ビジネスパーソンに欠かせない「伝えるスキル・マインド」について学び合う分科会を運営しています。分科会の立ち上げは少し勇気が要りましたが、ISBの「小さな一歩でもいい(中略)行動してみることで見える景色は変わるはず」というクレドが背中を押してくれました。思い切ってチャレンジし、現在とても充実した活動ができています。特に良かったのは、会を通して勤務地・職種・年代などを超えたつながりが生まれたことです。多様なメンバーで対話するからこそ、自分ひとりでは持ち得なかった気づきを得られることも多く、刺激を受けています。テーマに関するスキルアップはもちろん、視野が広がることで日常業務にもプラスの影響があると感じます。

知的財産戦略の基本方針

当社グループが目指す技術立脚型企業においては、知的財産が重要な資産となります。そこで「JX金属グループ 知的財産に関する基本方針」を2022年度に制定し、グループ全体で知財活動を推進しています。

JX金属グループ 知的財産に関する基本方針

私たちJX金属グループは、知的財産を重要な資産と認識し、技術立脚型企業として持続可能な社会の発展に貢献すべく、以下の方針に基づいて活動を行います。

経営層・事業部門・技術部門・知財部門を含む全社的な連携により、経営戦略、事業戦略および技術戦略を反映した知的財産活動を行います。
適切な知的財産権の取得およびノウハウの管理により、技術的な競争優位性を確立します。
知的財産を介した連携により、社外の様々なパートナーとの共創を推進します。
当社グループの技術および製品を守るために、当社グループが有する知的財産権に対して侵害の疑いがある場合には権利主張を含め適切に対応します。
他者の知的財産を尊重し、他者の知的財産権を侵害するリスクに適切に対応します。

具体的な取り組み

基本方針1-1

 知財体制

社長直下の技術本部内に知的財産部を配置し、「三位一体」をキーワードに、経営層・事業部門・技術部門との連携強化を図り、経営戦略、事業戦略および技術戦略を反映した知的財産戦略を検討し、実行しています。知的財産部内には、事業分野ごとに分けた複数のグループを設け、担当する事業部などと連携しながら事業分野ごとに最適化した知的財産活動を展開しています。
2023年度より、各事業部門を担当するグループに加え、新規事業の創出の支援を行うグループを新設しました。これにより、新規テーマ・アイデアに関連する知財情報の調査・分析などを迅速に行い、新規事業の創出に貢献します。

基本方針1-2

 知財人材の育成
2023年度に実施した社員教育の様子

知的財産活動を遂行していくためには、知財人材の育成が重要です。当社グループでは、知的財産の適切な取得・保護・活用および知的財産リスクのマネジメントの観点から、事務系を含めた全社員に対し、体系的なプログラムに基づき独自の教材を用いて知的財産教育を実施しています。また、年々高度化する知的財産業務に対応するため、知的財産部では、弁理士資格やAIPE認定知的財産アナリストの取得を奨励するとともに、最新の知財関連知識の共有を推進し専門性向上に努めています。

基本方針2-1

 発明推進の取り組み
2023年度の受賞者(写真のほか3組が受賞)

当社グループでは、特許法に従い、「職務発明の取扱いに関する規則」を制定しています。出願時および登録時の奨励金に加え、利益をあげた特許の発明者や優れた発明を考案した発明者を表彰する当社独自の制度を設け、開発および発明意欲を促し、技術立脚型の企業活動を推進しています。
2023年度は、電極用銅および銅合金、化合物半導体基板の加工技術、銅合金の成形性改善、工場の騒音対策の4件の発明が表彰対象となりました。なお当社では、ノウハウとして秘匿化する発明も特許と同様に表彰の対象としています。

基本方針2-2

 特許権の保有状況など
特許保有件数

当社グループは、技術立脚型企業を目指して積極的な研究開発を推進しています。研究開発の過程で発生した発明については、事業戦略に合わせ、国内外において適切な権利化活動を行っています。一方、特許出願せずにノウハウとして秘匿する発明についても所定の書式の文書を作成し、ノウハウの対象を可視化するとともに、厳格に秘密管理することで、営業秘密として保護しています。

基本方針3

 知財情報の活用を推進

当社グループでは、知財情報(特許情報など)を技術トレンド把握のためのビッグデータと捉え、侵害予防や特許性判断の目的だけでなく、さまざまな目的で活用しています。例えば、IPランドスケープ活動の一環として、自社・他社の特許情報を事業情報、市場情報などと組み合わせて調査・分析を行うことにより、顧客ニーズ・技術動向の変化を先取りし、事業戦略の立案、開発テーマ創出、パートナー探索などに貢献しています。また、知的財産担当者以外にも知財情報の活用を促進する取り組みも行っています。
2023年度は、知的財産担当者とマーケティング担当者が参加し、外部講師による実践型のワークショップを行いました。具体的には、実際に参入の可能性を検討しているテーマを分析し、その結果から、仮想の参入シナリオや共創先の検討を行いました。

基本方針4

 当社知的財産の保護

当社が有する特許権をはじめとする知的財産権に対して侵害の疑いがある場合には、当社の技術および製品を守るために、権利主張を含め適切に対応しています。不当な侵害に対しては話し合いで解決することを基本としながらも、当社グループの知的財産権を尊重していただけない場合は、裁判所など第三者の判断を仰ぐことも辞さない方針としています。

基本方針5

 他者の知的財産の尊重

当社では、事業部、研究開発部門、知的財産部が連携して他者の特許などの知的財産に対応する体制を構築しています。新規事業の企画、製品の研究・開発、製品の製造・販売の各段階において、当社製品に関連する他者の特許などの把握に努めています。仮に、当社製品に関連度の高い特許などが抽出された場合には、必要に応じて社外の弁護士または弁理士の意見を収集しつつ、詳細なリスクの検証と対策方針の策定を行っています。