

人的資本経営の推進
装置産業型企業から技術立脚型企業へと転身し、2040年長期ビジョンを実現するためには、「人」の力によるイノベーションが不可欠であり、「人」の意欲・能力を最大限引き出すことが経営上の重要課題です。こうした考えのもとで、各施策を立案する際の判断の拠り所とするべく、これからも大切にしていきたいものと、今後新たに変えていきたいもの双方を合わせて、「従業員に対する姿勢」としての人事ポリシーを新たに策定しました。当社グループではこの人事ポリシーに基づき、As is(現状)とTo be(あるべき姿)のギャップ(=人事課題)の解消に向けたさまざまな改革施策を展開しています。
人的資本経営の全体像

人材ポートフォリオマネジメントの考え方
当社は2040年長期ビジョンの実現を目指し、人的資本価値の最大化を目的とした人材ポートフォリオマネジメントを推進しています。具体的には、事業戦略の実現に必要なポジションとその要件を定め、最適な人材を配置すべく戦略的な育成・登用や各種人事施策を行います。また、組織の持続的な成長をより確実なものとするため、社員の自律的な意欲に基づく成長・価値発揮を促進するための取り組みも進めています。これらにより、人材の最適配置と成長支援の両立を図っています。

人材ポートフォリオのイメージ

人材に対する考え方
目指す人材像

当社グループでは、下記のような人材が新たな価値や付加価値を創出していくと定義し、人材獲得・育成の強化を推進しています。
- 1.多様性を理解・受容しながらさまざまな立場の関係者と協働し、革新をリードできる人材
- 2.オーナーシップ(当事者意識)を持ち、自ら考え、行動・チャレンジできる人材
- 3.環境の変化に応じて「ありたい姿」を描き、実現に向け貪欲に策を講じられる人材
人材獲得の施策
当社では、人事部採用担当の組織強化や採用チャネルの多様化により、幅広く優秀な人材を採用しています。
新卒採用では、高専生を含めた技術系人材、留学経験を有する国内外のグローバル人材を積極採用しています。事務系人材の採用においては、学生が自分の専門分野や興味、関心に基づいてより自律的にキャリアを選択できるようにすることを目的とし、初期配属職種を確約するコース別採用を2026年度採用から取り入れています。
当社にないさまざまな知見・経験をお持ちの方に活躍いただくキャリア採用にも積極的に取り組んでいます。また従業員の知人・友人を紹介いただくリファラル採用、当社退職者に再入社いただくカムバック採用など、チャネルの多様化を進めています。
大学卒・高専・キャリアと、さまざまなチャネルを用いることで採用人材の質・量・多様性を確保し、新たな知見や技術、アイデアなどを積極的に共有しようとする闊達な企業風土の醸成につながっています。
多様な価値観の醸成
採用実績の内訳(当社)

当社では、人事部採用担当の組織強化や採用チャネルの多様化により、幅広く優秀な人材を採用しています。新卒採用では、高専生を含めた技術系人材、留学経験を有する国内外のグローバル人材を積極採用しています。事務系人材の採用においては、学生が自分の専門分野や興味、関心に基づいてより自律的にキャリアを選択できるようにすることを目的とし、初期配属職種を確約するコース別採用を2026年度採用から取り入れています。当社にないさまざまな知見・経験をお持ちの方に活躍いただくキャリア採用にも積極的に取り組んでいます。また従業員の知人・友人を紹介いただくリファラル採用、当社退職者に再入社いただくカムバック採用など、チャネルの多様化を進めています。大学卒・高専・キャリアと、さまざまなチャネルを用いることで採用人材の質・量・多様性を確保し、新たな知見や技術、アイデアなどを積極的に共有しようとする闊達な企業風土の醸成につながっています。
技術系人材の採用
当社では、技術立脚型企業への転身に向けた各種施策の確実な実行に向け、競争力の根源となる技術開発力、生産現場力をさらに高めていくため、技術系人材を積極的に採用しています。
〈新卒採用〉
- 大学(院)時の専攻を限定せず、幅広い学部から当社の求める志向と能力を持った人材を採用
- 学校推薦ではない、自由応募者の採用拡大
- 高専生の積極的な採用
〈キャリア採用〉
- 新規事業企画や技術開発などのポジションにて、当社にない分野の技術的知見を持つ人材を採用
- 基幹職以上の重要ポジションでの採用
- 多様な業界出身(自動車/電機/化学/大学etc.)の人材を採用
- 従業員紹介(リファラル)や退職者の再入社(カムバック)で自社にマッチした人材を採用
リファラル·カムバック採用社員の声

機能材料事業部 営業部
冨田 真央
当社を退職し、2年ほど他社で経験を積んだ後、2024年1月に再入社しました。展示会で当社の先輩に再会したことがきっかけで、転職先で学んだことを当社で活かすことが、より自身の成長につながると考えたためです。再入社に際しては、上手く職場になじめるか、子育てを中心とした家庭との両立などの不安もありましたが、職場の先輩·後輩や人事部の方々からさまざまなサポートをいただいたことで、心の準備が整いました。実際に戻ってみて、「戻ってきてくれてよかった」とおっしゃってくださる方も多く、会社の方々の温かさを感じています。現在は事業部の主要な取引先を担当し、構造改革に関する施策の実行者としても、多くの経験を積むことができています。外部で得た、以前とは異なる視点を活かして業務に取り組み、その知見と経験を共有することで、会社のさらなる成長に貢献したいと考えています。
人材育成の強化
当社では、以下の人材育成方針のもと、各種の施策・支援策を展開しています。
人材育成方針
●
個に応じた自律的・自発的な成長のための機会を提供
期待する人材像に必要とされるスキル教育など一律の教育を実施する一方、社員一人ひとりの個(役割期待・力量・志向・希望するキャリア等)に応じた柔軟な教育機会を提供し、社員の自律的・自発的な成長を促す。
●
実践を重視した人材育成
業務経験を育成の中心に据え、評価や教育等、総合的な人事施策により育成する。特に「異なる環境」における「実践型」の育成を推進することで、広い視野やタフな精神力、自ら考え行動するマインドを育てる。
●
多様性を受容しチャレンジを奨励する風土での人材育成
「期待する人材像」を育めるような、多様性を受容しチャレンジを奨励する管理職層の育成や職場風土を醸成する。
● 継続的な成長を支えるターゲット人材※の計画的な育成
- ・
- 経営幹部候補人材、グローバルな事業運営や新規事業等を担える人材を計画的に育成(選抜・配置・教育)する。また、スペシャリストの教育機会も充実させることで、技術立脚を支える人材を育成する。
- ・
- 管理職層や現場リーダーの教育を充実させ、現場対応能力を強化する。
- ※個別に育成をすべき特定の人材
人材育成の施策
当社では、人材育成方針のもと、各種の施策·支援策を展開しています。社員が自ら希望する外部研修プログラムを申請・受講できる「セルフイノベーションサポート」制度では、受講費用の半額(上限50万円)を会社が補助することで、学びへの意欲を後押ししています。さらに、時間や場所にとらわれず学習できるオンライン動画学習サービスの導入により、柔軟な学習環境を整備。語学力向上を目的としたオンライン学習や海外研修など、グローバル人材の育成にも注力しています。また、教育の場を社内に限定せず、外部組織との越境による実践的な学習機会も提供しており、従業員が多様な価値観や見に触れることで、より広い視野を持ったキャリア形成を支援しています。次世代リーダー育成にも取り組んでおり、経営課題へ理解や全社的な視点を養うプログラムを通じて、将来の企業成長を担う人材の育成を進めています。これらの施策を通じて、従業員が主体的に学び、成長できる環境を整えることで、企業全体の競争力強化を図っています。
教育体系の整備
基幹職登用の早期化や職種を超えた異動といったキャリアパスの多様化等の状況に合わせ、2023年度から柔軟かつ能動的な教育体系への見直しを行いました。
若手階層別教育では若手の早期戦力化と管理職向け教育の拡充、選択型教育の導入や自己啓発支援などで自律的な学びの促進、社外での実践的な教育の機会、経営幹部候補人材・海外事業展開を担えるグローバル人材・専門的な知見で会社を牽引するスペシャリスト・現場の競争力向上を担う人材の計画的な育成を目指しています。
その他、財務知識やコミュニケーションの質や問題解決スキルに関する共有認識を醸成するためのトレーニングも実施しています。

充実した研修制度
当社では、従業員一人ひとりの能力や資質に応じたさまざまな研修制度を設けています。
若手向け研修
基幹職早期登用を見据えて従来よりも育成スピードを速め、入社3年目までに重点的に研修を行い、当社のDNAを取り入れながら自律自走し、チャレンジを行うための基礎力とマインドの獲得を目指しています。その中で、入社半年後にはフォローアップ研修を行い、入社してからの自分自身を振り返り、現状と期待される役割についての認識を高めるとともに、段取り力の習得を通して前向きにチャレンジできるようフォローしています。また、リーダー層には答えのない問題を解決するための力を養う研修を実施し、基幹職になる前の段階から全社視点的思考の醸成も行っています。
基幹職向け研修
基幹職人事制度改定に伴い、マネジメント力向上や経営マインド、スキルを身に付けることを目的とした基幹職向けの研修を充実化させました。新任基幹職研修では、副社長とのパネルディスカッションを実施して経営層の考えや具体的な経験に直接触れることで、基幹職としての姿勢や全社視点での考え方を理解することを目指しています。
次世代リーダー育成プログラム
当社の持続的成長を担う人材を育成するため、自主的に参加を希望した社員を対象に実施しています。プログラムでは、経営の現状や重点課題への理解を深める講義に加え、役員との対話や全社的視点での課題解決に取り組むグループワークを通じて、経営感覚と変革を推進する力を養います。参加者は多様なバックグラウンドを持つ社員で構成され、互いに刺激し合いながら、次世代リーダーとして必要な視座と実行力を高めています。
現場管理者向け研修
重要な課題である現場力向上のため、製造現場の要となる係長職・主任職を対象に研修を行い、現場の管理者として必要な能力開発・知識の獲得を図っています。当社の経営の現状と課題の理解を深めながら、チームで課題に向かうためのリーダーシップ、部下育成・フォローするためのスキルやマインドを醸成しています。
選択制プログラム
社員の自律的・自発的な成長のため、従来の階層別教育に加え、各社員の役割期待・力量・志向等に応じて学ぶことができる選択制プログラムを導入しました。ロジカルシンキング、ビジネス定量分析、DXスキル・戦略等の複数の中から、自身が強化したい知識・スキルを受講することができます。


グローバル人材育成
海外研修
若手層を対象に海外研修を行っています。語学や異文化理解、関係構築、グローバルビジネス意識の醸成だけでなく、異なる環境に飛び込むタフさや自信をつけ、さまざまなスキル・知識・マインドを養うことを目的としています。
国外留学
経営人材育成を目的として対象者を選抜し、学位取得が可能な海外大学院へ派遣して、専門性の強化やマネジメント能力の強化を図っています。
語学オンライン総合学習
グローバルな事業運営を担う人材育成の一環として、語学オンライン総合学習システム「goFLUENT」を2023年度より導入しています。ネイティブ講師との個別レッスンを通じて、実践的な語学力を高めることができる「1on1レッスン」 を中心に、実践的に業務で活用できる語学学習を行うことができます。
キャリア教育
当社で何を成し遂げたいか、自身のこれからの役割は何か、どのようなスキルを身に付けるべきか等、今後のライフプランとキャリアを自律的に考える機会として年代別のキャリア教育を導入しました。キャリアカウンセラーによる講義やライフイベントと仕事の両立のための社内制度を紹介し、将来への不安を取り除きながら自律的なキャリア構築を支援していきます。
越境学習
教育の場を社内に限定せず、外部組織との越境による実践的な学習機会も提供しており、従業員が多様な価値観や知見に触れることで、より広い視野を持ったキャリア形成を支援しています。これらの施策を通じて、従業員が主体的に学び、成長できる環境を整えることで、企業全体の競争力強化を図っています。
社内公募
本制度は、「主体的にチャレンジする文化の醸成」に加え、「キャリア形成」「人材確保・定着」を目的とし、2024年度から実施しています。募集するポジションはテーマ性があるもの、他企業との人材交流を目的としたポジションとしましたが、2025年度は主体的にチャレンジできる風土を広げるために募集ポジションを拡大し実施しています。
自己啓発支援
社員自らが希望する外部研修プログラムを申請して受講し、プログラム終了時に会社が費用の半額(上限50万円/1プログラム)を補助する「セルフ・イノベーション・サポート」の制度を用意しています。資格取得や語学力向上を目的として利用する社員も多く、社員の自発的な成長を支援しています。
制度利用者の声

機能材料部門
津田 梨奈
海外のお客様との業務を通じて、語学力の重要性を痛感し、自己啓発支援制度を活用して英語学習を始めました。最初は思うように話せず悩むことも多くありましたが、毎週英会話教室に通うことで徐々にコミュニケーションの質が向上。少しずつですが業務にも自信を持って取り組めるようになりました。
昨年度は「越境学習」に挑戦し、1年間地方自治体へ出向しました。越境学習とは、自社を離れて他の企業や団体で働くことで、異なる価値観や文化に触れながら学ぶ取り組みです。これまでとは全く異なる環境/業種で、立場や考え方の異なる方々と協働する難しさと楽しさを実感し、相手の背景を理解しながら物事を進める力が養われたと感じています。
この度、海外赴任が決まりましたが、英語学習や越境学習など、これまでの様々な経験が自身の成長につながり、新たな挑戦にも前向きに取り組むことができています。
能力を最大限発揮できる環境の整備
当社では、人事諸制度の改定を2021年度より段階的に進めてきました。社員一人ひとりが自分自身の役割を意識し、互いに尊重・刺激し合い、切磋琢磨しながらよりチャレンジングに課題に取り組める環境の整備を通して、技術立脚型企業への転身を目指してまいります。
基幹職人事制度の改定
職種や部署、等級にかかわらず、長期・全社目線でマネジメントを担える優秀な人材を育成・抜擢し、経営の中枢を担ってもらうことを目的とした制度を導入しています。具体的には、部下を持つライン長を管理職として区分を明確化したほか、職責の大きさに基づく処遇の徹底、基幹職登用の早期化などの施策を実行しています。
一般職人事制度の改定
生産現場を支える人材を適切に評価・処遇することによる現場競争力の強化、事業拡大に対応するための人材の確保・育成、シニアをはじめとした多様な人材が活躍できる仕組みづくりなどを実現するため、以下の施策を実行しています。

①「総合職」と「業務職」のコース区分の明確化
各コースの役割を明らかにした上で、それに応じた適切な評価および処遇ができる仕組みを設けています。また、業務職から総合職・地域総合職へのコース転換制度を設け、本人の挑戦意欲に応じて「業務職」から「総合職・地域総合職」にチャレンジできる仕組みも整えることで、より自律的なキャリア形成に向けた支援や変革に挑戦する企業文化の醸成を図っていきます。
職能区分:一般職
コース区分 | 勤務地 | 職務内容 |
---|---|---|
総合職 | 国内・海外拠点 | 全社の経営戦略に基づき、対象事業・機能全体を運用、発展させる職務 |
地域総合職 | 茨城県内事業所※1 | 全社の事業計画に従い、エリアにおける対象事業・機能を運営、発展させる職務 |
業務職 | 本社・事業所※2 | 特定の事業所において、所属部署の業務の確実な管理・実行を行う職務 |
- ※1原則として転居を伴う異動は無し
- ※2原則として転居を伴う県外への異動は行わない
②「地域総合職」の設置
大幅な人員増が見込まれる茨城県エリアを対象に、当社初となる「地域総合職」コースを設置しています。本コースでは勤務場所を茨城県内とし、原則として転居を伴う異動は行いません。IターンやUターンを含め、茨城県内での採用や事業運営の強化につなげていきます。
③65歳定年
生産現場の安定操業や技能伝承などの観点から定年年齢を60歳から65歳に引き上げ、処遇についても60歳時点の給与水準を維持することとしています。一方で、若手・中堅層にマネジメント機会を付与し、組織を活性化するという観点から、60歳を上限とする役職定年制度を導入しています。
地域総合職社員の声

日立事業所総務部総務課(兼)プロジェクト推進本部
企画管理グループひたちなか事務所
吉成 瑞希
私は夫の地元である茨城に移り住み、縁あって日立事業所に中途採用者として入社しました。さまざまな業務経験を積む中で、キャリアアップしたい、もっと広い視点での仕事がしたいとの思いが募るようになり、コース転換制度への挑戦を決意しました。総合職を目指したいという気持ちもありましたが、子育てや家族の生活環境などを考慮して、この茨城の地でさらに活躍できる地域総合職を選択しました。
2023年4月から地域総合職に転換し、現在はひたちなか新工場の立ち上げ推進に微力ながら携わっています。仕事の幅も広がり、学ぶことも多くやりがいを感じながら仕事を進めています。忙しい毎日ではありますが、仕事と家庭の両立!を目標に、職場の方々そして家族の協力を得ながら、茨城県内での事業強化に貢献できるよう精一杯頑張っています。
従業員エンゲージメント
2025年1月に実施した従業員意識調査(回答率98.2%)では、全国平均※と比較して概ね良好なエンゲージメント水準が確認されました。特に「成長実感」「業務へのやりがい」「業務目標の明確さ」「仕事の達成感」など、業務遂行に関する項目で高い満足度が示されました。
一方で、一般職社員への経営方針浸透、若手層のキャリア形成支援、仕事内容の面白さや負荷感、技術伝承など、変革と持続的成長に向けた課題が挙がっています。
調査結果については、各職場へのフィードバックによる改善支援を行うとともに、キャリア支援制度の拡充、各種人事制度見直し検討、社内外への情報開示の強化等の施策へと結び付けてまいります。
今後、課題に対するKPIを設定の上、継続的な取り組みを通じて、人的資本の更なる価値向上を図ってまいります。
- ※2024年12月に日本の労働者約1万人に対して実施された調査結果