

人的資本経営の推進
技術立脚型企業への転身を図り、企業価値の最大化を実現していくためには、「人」の力によるイノベーションが不可欠であり、「人」の意欲・能力を最大限引き出すことが経営上の重要課題です。こうした考えのもと、人材への投資を積極的に進めています。
人材獲得の強化
当社グループでは、下記のような人材が新たな価値や付加価値を創出していくと定義し、人材獲得の強化を推進しています。
- 1.多様性を理解・受容しながらさまざまな立場の関係者と協働し、革新をリードできる人材
- 2.オーナーシップ(当事者意識)を持ち、自ら考え、行動・チャレンジできる人材
- 3.環境の変化に応じて「ありたい姿」を描き、実現に向け貪欲に策を講じられる人材
多様な価値観の醸成
採用実績の推移(当社)

当社では、人事部採用担当の組織強化や採用チャネルの多様化により、幅広く優秀な人材を採用しています。新卒採用では、高専生を含めた技術系人材、留学経験を有する国内外のグローバル人材を積極採用しています。当社にないさまざまな知見・経験をお持ちの方に活躍いただくキャリア採用も定着しており、直近3年の採用実績においては新卒とキャリアの割合がほぼ5:5となっています。そのキャリア採用拡充のために、従業員の知人・友人を紹介いただくリファラル採用、当社退職者に再入社いただくカムバック採用など、チャネルの多様化を進めています。大学卒・高専・キャリアと、さまざまなチャネルを用いることで採用人材の質・量・多様性を確保し、新たな知見や技術、アイデアなどを積極的に共有しようとする闊達な企業風土の醸成につながっています。
技術系人材の採用
当社では、技術立脚型企業への転身に向けた各種施策の確実な実行に向け、競争力の根源となる技術開発力、生産現場力をさらに高めていくため、技術系人材を積極採用しています。
〈新卒採用〉
- 大学(院)時の専攻を限定せず、幅広い学部から当社の求める志向と能力を持った人材を採用
- 学校推薦ではない、自由応募者の採用拡大
- 高専生の積極採用
〈キャリア採用〉
- 新規事業企画や技術開発などのポジションにて、当社にない分野の技術的知見を持つ人材を採用
- 基幹職以上の重要ポジションでの採用
- 多様な業界出身(自動車/電機/化学/大学etc.)の人材を採用
- 従業員紹介(リファラル)や退職者の再入社(カムバック)で自社にマッチした人材を採用
リファラル·カムバック採用社員の声

機能材料事業部 営業部
冨田 真央
当社を退職し、2年ほど他社で経験を積んだ後、2024年1月に再入社しました。展示会で当社の先輩に再会したことがきっかけで、転職先で学んだことを当社で活かすことが、より自身の成長につながると考えたためです。再入社に際しては、上手く職場になじめるか、子育てを中心とした家庭との両立などの不安もありましたが、職場の先輩·後輩や人事部の方々からさまざまなサポートをいただいたことで、心の準備が整いました。実際に戻ってみて、「戻ってきてくれてよかった」とおっしゃってくださる方も多く、会社の方々の温かさを感じています。現在は事業部のメイン顧客を担当し、構造改革に関する施策の実行者としても、多くの経験を積むことができています。外部で得た、以前とは異なる視点を活かして業務に取り組み、その知見と経験を共有することで、会社のさらなる成長に貢献したいと考えています。
人材育成の強化
当社では、以下の人材育成方針のもと、各種の施策・支援策を展開しています。
人材育成方針
● 個に応じた自律・自発的な成長のための機会を提供
期待する人材像に必要とされるスキル教育など一律の教育を実施する一方、社員一人ひとりの個(役割期待・力量・志向・希望するキャリア等)に応じた柔軟な教育機会を提供し、社員の自律的・自発的な成長を促す。
● 実践を重視した人材育成
業務経験を育成の中心に据え、評価や教育等、総合的な人事施策により育成する。特に「異なる環境」における「実践型」の育成を推進することで、広い視野やタフな精神力、自ら考え行動するマインドを育てる。
● 多様性を受容しチャレンジを奨励する風土での人材育成
「期待する人材像」を育めるような、多様性を受容しチャレンジを奨励する管理職層の育成や職場風土を醸成する。
● 継続的な成長を支えるターゲット人材※の計画的な育成
- ・
- 経営幹部候補人材、グローバルな事業運営や新規事業等を担える人材を計画的に育成(選抜・配置・教育)する。また、スペシャリストの教育機会も充実させることで、技術立脚を支える人材を育成する。
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- 管理職層や現場リーダーの教育を充実させ、現場対応能力を強化する。
- ※個別に育成をすべき特定の人材
教育体系の整備
基幹職登用の早期化や職種を超えた異動といったキャリアパスの多様化等の状況に合わせ、2023年度から柔軟かつ能動的な教育体系への見直しを行いました。
若手階層別教育では若手の早期戦力化と管理職向け教育の拡充、選択型教育の導入や自己啓発支援などで自律的な学びの促進、社外での実践的な教育の機会、経営幹部候補人材・海外事業展開を担えるグローバル人材・専門的な知見で会社を牽引するスペシャリスト・現場の競争力向上を担う人材の計画的な育成を目指しています。
その他、財務知識やコミュニケーションの質や問題解決スキルに関する共有認識を醸成するためのトレーニングも実施しています。

充実した研修制度
当社では、従業員一人ひとりの能力や資質に応じたさまざまな研修制度を設けています。
若手向け研修
基幹職早期登用を見据えて従来よりも育成スピードを速め、入社3年目までに重点的に研修を行い、当社のDNAを取り入れながら自律自走し、チャレンジを行うための基礎力とマインドの獲得を目指しています。その中で、入社半年後にはフォローアップ研修を行い、入社してからの自分自身を振り返り、現状と期待される役割についての認識を高めるとともに、段取り力の習得を通して前向きにチャレンジできるようフォローしています。また、リーダー層には答えのない問題を解決するための力を養う研修を実施し、基幹職になる前の段階から全社視点的思考の醸成も行っています。
基幹職向け研修
基幹職人事制度改定に伴い、マネジメント力向上や経営マインド、スキルを身に付けることを目的とした基幹職向けの研修を充実化させました。新任基幹職研修では、副社長とのパネルディスカッションを実施して経営層の考えや具体的な経験に直接触れることで、基幹職としての姿勢や全社視点での考え方を理解することを目指しています。
現場管理者向け研修
重要な課題である現場力の向上のため、製造現場の要となる係長職・主任職を対象に研修を行い、現場の管理者として必要な能力開発・知識の獲得を図っています。当社の経営の現状と課題の理解を深めながら、チームで課題に向かうためのリーダーシップ、部下育成・フォローするためのスキルやマインドを醸成しています。
選択制プログラム
社員の自律的・自発的な成長のため、従来の階層別教育に加え、各社員の役割期待・力量・志向等に応じて学ぶことができる選択制プログラムを導入しました。ロジカルシンキング、ビジネス定量分析、DXスキル・戦略等の複数の中から、自身が強化したい知識・スキルを受講することができます。


グローバル人材育成
海外研修
若手層を対象に海外研修を行っています。語学や異文化理解、関係構築、グローバルビジネス意識の醸成だけでなく、異なる環境に飛び込むタフさや自信をつけ、さまざまなスキル・知識・マインドを養うことを目的としています。
国外留学
経営人材育成を目的として対象者を選抜し、学位取得が可能な海外大学院またはMBA取得が可能なビジネススクールへ派遣して、専門性の強化やマネジメント能力の強化を図っています。
語学オンライン総合学習
グローバルな事業運営を担う人材育成の一環として、語学オンライン総合学習システム「goFLUENT」を2023年度より導入しています。英語や中国語、ドイツ語などのeラーニング、オンラインによるグローバル会話クラス、能力判定テストを組み合わせて実践的に業務で活用できる語学学習を行うことができます。
キャリア教育
当社で何を成し遂げたいか、自身のこれからの役割は何か、どのようなスキルを身に付けるべきか等、今後のライフプランとキャリアを自律的に考える機会として年代別のキャリア教育を導入しました。キャリアカウンセラーによる講義やライフイベントと仕事の両立のための社内制度を紹介し、将来への不安を取り除きながら自律的なキャリア構築を支援していきます。
自己啓発支援
社員自らが希望する外部研修プログラムを申請して受講し、プログラム終了時に会社が費用の半額(上限50万円/1プログラム)を補助する「セルフ・イノベーション・サポート」の制度を用意しています。また、さらに学びやすい環境を整えるため、場所や時間に制約されることなく学習が可能なオンライン動画学習サービス「Udemy Business」を2023年度より導入しています。さまざまなコースや教材にアクセスでき、多様な知識やスキルを身に付ける機会が増えています。
能力を最大限発揮できる環境の整備
当社では、人事諸制度の改定を2021年度より段階的に進めてきました。社員一人ひとりが自分自身の役割を意識し、互いに尊重・刺激し合い、切磋琢磨しながらよりチャレンジングに課題に取り組める環境の整備を通して、技術立脚型企業への転身を目指してまいります。
基幹職人事制度の改定
職種や部署、等級にかかわらず、長期・全社目線でマネジメントを担える優秀な人材を育成・抜擢し、経営の中枢を担ってもらうことを目的とした制度を導入しています。具体的には、部下を持つライン長を管理職として区分を明確化したほか、職責の大きさに基づく処遇の徹底、基幹職登用の早期化などの施策を実行しています。
一般職人事制度の改定
生産現場を支える人材を適切に評価・処遇することによる現場競争力の強化、事業拡大に対応するための人材の確保・育成、シニアをはじめとした多様な人材が活躍できる仕組みづくりなどを実現するため、以下の施策を実行しています。

①「総合職」と「業務職」のコース区分の明確化
各コースの役割を明らかにした上で、それに応じた適切な評価および処遇ができる仕組みを設けています。また、業務職から総合職・地域総合職へのコース転換制度を設け、本人の挑戦意欲に応じて「業務職」から「総合職・地域総合職」にチャレンジできる仕組みも整えることで、より自律的なキャリア形成に向けた支援や変革に挑戦する企業文化の醸成を図っていきます。
職能区分:一般職
コース区分 | 勤務地 | 職務内容 |
---|---|---|
総合職 | 国内・海外拠点 | 全社の経営戦略に基づき、対象事業・機能全体を運用、発展させる職務 |
地域総合職 | 茨城県内事業所※1 | 全社の事業計画に従い、エリアにおける対象事業・機能を運営、発展させる職務 |
業務職 | 本社・事業所※2 | 特定の事業所において、所属部署の業務の確実な管理・実行を行う職務 |
- ※1原則として転居を伴う異動は無し
- ※2原則として転居を伴う県外への異動は行わない
②「地域総合職」の設置
大幅な人員増が見込まれる茨城県エリアを対象に、当社初となる「地域総合職」コースを設置しています。本コースでは勤務場所を茨城県内とし、原則として転居を伴う異動は行いません。IターンやUターンを含め、茨城県内での採用や事業運営の強化につなげていきます。
③65歳定年
生産現場の安定操業や技能伝承などの観点から定年年齢を60歳から65歳に引き上げ、処遇についても60歳時点の給与水準を維持することとしています。一方で、若手・中堅層にマネジメント機会を付与し、組織を活性化するという観点から、60歳を上限とする役職定年制度を導入しています。
地域総合職社員の声

日立事業所総務部総務課(兼)プロジェクト推進本部
企画管理グループひたちなか事務所
吉成 瑞希
私は夫の地元である茨城に移り住み、縁あって日立事業所に中途採用者として入社しました。さまざまな業務経験を積む中で、キャリアアップしたい、もっと広い視点での仕事がしたいとの思いが募るようになり、コース転換制度への挑戦を決意しました。総合職を目指したいという気持ちもありましたが、子育てや家族の生活環境などを考慮して、この茨城の地でさらに活躍できる地域総合職を選択しました。
2023年4月から地域総合職に転換し、現在はひたちなか新工場の立ち上げ推進に微力ながら携わっています。仕事の幅も広がり、学ぶことも多くやりがいを感じながら仕事を進めています。忙しい毎日ではありますが、仕事と家庭の両立!を目標に、職場の方々そして家族の協力を得ながら、茨城県内での事業強化に貢献できるよう精一杯頑張っています。