2025年度 社外取締役座談会

社外取締役5名と村山会長

2025年6月12日、JX金属グループの持続的成長に向けての課題、ガバナンス体制の強化などをテーマに、社外取締役5名と村山会長による座談会を実施しました。

  • A
  • 社外取締役(監査等委員)
  • 二宮 雅也
  • B
  • 社外取締役(監査等委員)
  • 川口 里香
  • C
  • 代表取締役会長
  • 村山 誠一
  • D
  • 社外取締役
  • 所 千晴
  • E
  • 社外取締役(監査等委員)
  • 佐久間 総一郎
  • F
  • 社外取締役
  • 伊藤 元重

社外取締役としての責務と役割

村山:
今回は株式上場後初めての座談会となります。組織として新たなステージに向けて動き出す中で、改めて当社の社外取締役としての責務と役割についてお聞かせください。
伊藤:
上場により、経営の変化のスピードが一段と速くなっていると感じています。例えば、ベース事業とフォーカス事業の定義、事業ポートフォリオの見直し、企業理念の体系化などが進んできました。その上で重要なことは、これらを足元の変化だけでなく中長期の視点で捉えることです。こうした中で、私の役割は、経済全体のマクロの環境や、環境問題、あるいはグローバルの変化といった視点から、監督と執行について議論することであると考えています。
所:
私は大学の研究者として、銅の分離生成、資源循環、環境対応といった技術分野の知見を生かして意見を述べています。社会の変化が速く、求められる技術も刻々と進化していますので、それらをウォッチしていくことも自身の責務だと考えています。また、数少ない女性研究者としての経験から、ダイバーシティ推進の視点でも貢献したいと思っています。
佐久間:
私は鉄を扱う会社の出身ということで、同じ金属業界として経営課題も共通点が多いと感じています。これまでの企業における経験、とりわけ失敗した経験も含めて、監督と助言をバランスよく行っていきたいと考えています。今回のIPOは親子上場ではなく、当社が初めて自立した存在になったという意味で大きな意義があります。これからはマーケットと正面から向き合う覚悟が必要です。
川口:
私は国内法務の実務経験を生かし、経営のモニタリング機能を重視しながら適正なコーポレート・ガバナンスを実現していきたいと思います。どうしても企業の顧問弁護士的な見方で経営を見てしまいがちにはなりますが、そこは私に求められている役割ではないと考え、その上にある適正なコーポレート・ガバナンスを真に実現するためにはどうしたらいいか、という視点から日々考えております。
二宮 雅也
二宮:
企業がステークホルダーからの信任を得て持続的に発展するためには、業種業界を問わず、社会的な存在としての佇まいや在り方が重要だと考えています。これまでの企業経営の経験を踏まえ、会社を取り巻く様々なリスク排除に向け、積極的に問題提起しながら論議を深め、適切な結論に導くことが役割だと思っています。

株式上場に対する評価と今後の課題・伸びしろ

村山:
当社の株式上場に対する評価と、中長期的な成長に向けて取り組むべき課題、今後の伸びしろについてご意見をお願いします。
二宮:
規模にとらわれない安定的な収益と高い成長が実現する事業構造への改革、これは非常に難しいものの、事業ポートフォリオの組み替えと同時に、有利子負債の削減等の財務体質の改善もしっかりと実現し、持続的な発展を遂げるための基盤を短期間に築き上げた点は高く評価しています。一方で、成長投資と株主還元の両立が今後の課題です。そのためには積極的な情報発信と対話を尽くし、ステークホルダーからの信頼を得ることが不可欠です。
所 千晴
所:
装置産業型企業から技術立脚型企業への構造転換は、良い方向で進展したと評価しています。技術面から見ると、当社の伸びしろは2点あると思います。1点目は、資源循環や脱炭素への取り組みです。これらは業界をリードする、かなり踏み込んだものであり、今後もさらなる強みになると思います。2点目は、現在注力している半導体材料です。半導体がさまざまな活用をされていく中で、銅を中心とした金属はまだまだ多様な使い道、ニーズが考えられますので大きなチャンスと言えます。当社は技術的に見てもよいポジションを取っていると思います。
佐久間:
今回の上場で当社は技術の会社、半導体材料メーカーであるという立ち位置を明確にしました。今後は当社が持つ優位性を競合他社や諸外国がキャッチアップしてくることも想定されますので、もう一歩先へ進むためにも、さらに開発に注力していくことが必要だと思います。当社の使命は、銅やレアメタル等、金属資源を持続可能な形で活用することだと私は思っています。当社にしか構築できないサプライチェーンの可能性を世の中に示していく必要があると考えます。
伊藤 元重
伊藤:
当社は、長年立派な経営を行ってきたものの、独自の企業風土を持っている印象でした。上場の準備を進めていく中で、これまで当然と思っていたことでも、根本から見直そうという意見もでてきました。この点は率直に評価できますし、今後は上場をきっかけに、さらに経営のスピードがあがることを期待しています。
川口:
私は、株式上場により多様な株主・投資家との対話が増える中で、経営の方向性や進捗のスピードにおいて、どこかで無理が出る可能性をリスクとして捉えています。投資家の短期的な成果に対するプレッシャーを感じることで、チャレンジする文化が廃れたり、これまで発生しなかった不正が発生する等のリスクにつながる可能性もあります。これをどうやって防止していくかは、取締役会でもしっかりと議論していきたいと思います。
村山:
ありがとうございます。我々は非上場の時代が長かっただけに、資本市場に向き合う経営の感覚がまだまだ希薄であることを自覚しています。社外取締役の皆様に助言をいただきながら、その感覚を磨いていきたいと思います。

サステナビリティ経営とガバナンスの強化

村山:
事業ポートフォリオを変革していく中で、同時にサステナビリティ経営を推進し、ガバナンスを強化していくことの難しさを心配されるステークホルダーもいらっしゃいます。社外取締役の目線では、どのようにお考えでしょうか。
所:
フォーカス事業に経営資源を移しているということ自体は、当社の一番良いバランスを考えたときに、妥当なご判断だと思います。一方で、ベース事業における継続的な人材育成については注視していく必要があります。業界全体で仕組みを維持していく、そういった考え方も必要かもしれません。当社の場合には他の企業ともよく連携し、そうした仕組みをしっかりと考えることができていると思います。
川口 里香
川口:
当社には、今後さらなるDE&Iの推進が必要だと思っています。技術者の多い製造業だから、女性従業員が少なくても仕方ないと言っている時代ではありません。社内においてマイノリティである女性が活躍することで、組織全体がイノベーションを起こして健全に成長できるという信念のもと、社外取締役としての役割を果たしていきたいと考えています。
佐久間:
当社というのはこれまではどちらかと言うと、現場が強いリーダーシップを持っていたからこそ、事業の中心が鉱業のなかでも、半導体の最先端材料で世界のトップシェアを占めるところまで成長できたのだと思います。これからはまさに「強い現場」に加え「強い本社」を実現し、相互牽制とリスク管理を徹底することが重要だと思います。従業員の方には、自ら考えて実行していく意思をもって会社の牽引役を担ってもらいたいと思います。
伊藤:
役員報酬については、世の中の流れ、他社企業も研究の上、従来より踏み込んだ内容としました。長期業績連動報酬の比率が高まることにより、株主の皆様との価値共有をより一層図る制度となっています。今後、運用していく中で反省点や、あるいはもっと強化した方がいいという議論が出てくると思いますので、来年度以降の発展の一つのきっかけにしていければと考えています。二宮:特に、固定と業績連動の割合は、上場企業の指名報酬委員会として議論を尽くした結果であり、経営陣の意気込みの表れと思っています。
二宮:
特に、固定と業績連動の割合は、上場企業の指名報酬委員会として議論を尽くした結果であり、経営陣の意気込みの表れと思っています。
村山:
ありがとうございます。我々経営陣が助言をしっかりと咀嚼して、継続的に経営に生かしていくことの重要性を再認識しました。

JX金属グループに期待すること、今後の企業価値向上に向けて

二宮:
私はやはり情報発信が非常に大事だと思っています。様々な機会を通じて発信をしてステークホルダーの共感を高めること、これによってIPOを機会として作り上げた基盤をさらに強固なものにできると期待をしています。経営トップの揺るぎないリーダーシップ、対話を尽くす姿勢、日本の国と社会に貢献する企業として成長していく覚悟、これらを我々はしっかりとサポートしていきたいと思います。
佐久間 総一郎
佐久間:
私も、より積極的な社外に対する情報発信が重要であると考えています。様々な情報媒体を眺めていても、当社が半導体の製造に欠かせない製品で世界の6割以上のシェアを持っているにもかかわらず、半導体の材料サプライチェーンに名前がなかなか出てきません。より積極的なアピール活動を強く期待します。
川口:
私は常々、当社がどんな企業を目指すのかということを、全従業員、そして社外に対しても明示したいと考えていました。上場後、スピード感を持ってJX金属グループフィロソフィーの策定に取り組まれた点は高く評価しています。ただし、今後は、その目的地をすべての従業員や関係者が共有できるのかが鍵になります。魂を込めた企業理念の浸透を見守っていきたいと思います。
所:
株式上場したことで、これまで以上に多様なステークホルダーから注目される会社になっていくだろうと思います。私は大学の教員でもあり、当社の従業員や就職希望の学生や学会・団体等を通じて色々な声が届いてくる立場にありますから、そうした声にも耳を傾け、ぜひバランスのとれた企業の活動となるように支援していきたいと考えています。
伊藤:
今日も話題になりましたが、経営やガバナンスは、既定されたゴールを目指すものではなく、刻々と動くターゲットに向かって我々が走っていく必要があるものです。社外取締役の立場でいうと、大事なのは、答えはわからなくても取締役会での対話を増やし、問題意識を共有することだと思います。特に先端業界では、そういった変化への対応力が求められますので、そのサポートができればと思います。
村山 誠一
村山:
J X金属グループフィロソフィーは、常に変革の求められる時代の中で、当社として変わらない意志を打ちだすものです。このフィロソフィーの策定に際しても、社外取締役の皆様からも多くの貴重なご意見をいただき、それらをしっかりと盛り込んできました。
今後も、持続可能な成長の実現に向けて、社外取締役の皆様よりいただいた貴重なご意見・ご指導を、経営にしっかりと反映できる、そんな取締役会を運営してまいりたいと思います。本日はどうもありがとうございました。