ニュースリリース

2024年度

2024年11月12日

JX金属株式会社

独自表面処理を施した金属3Dプリンター用銅粉を開発
―レーザーパウダーベッド方式で純銅に匹敵する熱伝導性・電気伝導性を達成―

 JX金属株式会社(社長:林陽一、以下「当社」)は、独自の表面処理を施したレーザーパウダーベッド方式(以下、「L-PBF」*1)向け3Dプリンター用銅粉(以下、「本開発品」)を開発いたしました。

 

 銅粉を用いた3Dプリンティングは、既存の製造方法に囚われない革新的な製品展開が可能であり、小型化・軽量化、納期の短縮といった効果と性能向上が見込まれることから、ロケットエンジンの冷却機構や誘導加熱用コイルをはじめとして様々な分野での採用が期待されています。しかしながら、純銅は3Dプリンターの熱源として一般的に使われている近赤外レーザーをほとんど吸収せず、加えて、熱伝導率が高いため熱が逃げやすく、高密度造形には高出力レーザーを採用した金属3Dプリンターが必要となっていました。また、純銅粉の代替として銅合金粉を用いた場合、造形後に電気伝導率などを向上させるための熱処理を施しても、純銅に比べて9割以下の電気伝導率しか得られないこと、さらに、熱処理のための追加の設備投資や工程数の増加によりコストが上昇することが課題となっておりました。

 

 これら様々な課題に対し、当社は出資先企業であるAlloyed社*2との共同開発により、L-PBF向け3Dプリンター用銅粉を新たに開発いたしました。本開発品は造形性を向上させるために独自の表面処理が施されており、L-PBFの金属3Dプリンターで一般的な出力である400Wや500Wの近赤外レーザーを使用して高密度の造形に成功し、純銅と同等の電気伝導率(99%IACS以上*3)を持つ造形物の作製を可能にしました。また、本開発品を用いた場合、造形後の熱処理が不要であるため、銅合金粉を使用した場合に比べて工程を簡略化でき、生産性向上にも貢献できます。今後、本開発品のサンプル提供を順次開始し、拡販を推進して参ります。

 

 なお、本開発品を本年11月19日(火)~22日(金)にドイツ・フランクフルトにて開催される3Dプリンティング分野で世界最大規模の展示会である「Formnext 2024」に出展いたします。

 

 当社は今後も、先端素材のグローバルリーダーとして社会の発展と革新に貢献してまいります。

 

以 上

 

*1: 平らに敷き詰めた材料粉末にレーザーや電子ビームを照射してモデルの断面形状に溶融結合させ、一層積層するごとに造形ステージが下がり次の層を積層していく造形方式。

*2:金属3Dプリンター向けの合金設計、造形設計等の事業を展開する、英国オックスフォード大学発のスタートアップ企業。

*3:当社試験値

 

【参考】

 

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図1 本開発品の拡大写真

 

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図2 本開発品を使用した水冷コールドプレート(Alloyed社による造形)

 

表1 各種3Dプリンター銅系粉の比較(400 Wおよび500 Wレーザーによる造形時)

本開発品 銅合金粉

純銅粉(表面処理なし)

高密度造形可否

可能 可能 困難
伝導特性 高い 低い 高い
後熱処理 不要 必要 不要

 

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