低濃度PCB廃棄物無害化処理事業
処理事業者:JX金属苫小牧ケミカル株式会社
北海道内初 低濃度PCB廃棄物無害化処理の環境大臣認定を取得
2014年3月、北海道苫小牧市にあるJX金属苫小牧ケミカル株式会社(以下、苫小牧ケミカル)は、低濃度PCB廃棄物の無害化処理事業を遂行するための環境大臣認定を取得しました。これは低濃度PCB廃棄物の処理業者として、北海道内初の認定となります。
PCBとは
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、電気絶縁性が優れていることから、主としてトランス(変圧器)、コンデンサ(蓄電器)等の電気機器用の絶縁油、各種工業における熱媒体、感圧複写紙等に使用されていました。しかし、その有害性が社会問題となり、現在では新たな製造・輸入が禁止されている化合物です。
PCB廃棄物に関する規制
- PCBはかつて日本国内でも製造されていましたが、1972年に製造が禁止されました。
- PCB廃棄物を保管する事業者は、毎年度、PCB廃棄物の保管および処分の状況について、都道府県知事に届け出をすることが義務付けられています。
- PCB廃棄物の処分は法律により期限が定められています。2027年3月31日までに、PCB廃棄物を自ら処分するか、処分を他人に委託する必要があります。
- 国際的には、残留性有害汚染物質に関するストックホルム条約(PoPs条約)で、2028年までにPCB廃棄物を適正に処分することが求められており、日本もこの条約を締結しています。
PCB廃棄物処理の現状
- PCB廃棄物は、PCBの含有量により、高濃度と低濃度に分類されます。PCB濃度が0.5%を超える高濃度PCB廃棄物は、中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)が運営する全国5か所の拠点的広域処理施設でのみ処理が可能です。
- PCB濃度が0.5%以下の低濃度PCB廃棄物については、現在全国で処理施設の認定が進められています。低濃度PCBを含むトランス等に含まれる絶縁油だけでなく、トランス本体やドラム缶など低濃度PCBを含む廃棄物の筐体を含めた処理ができるのは、苫小牧ケミカルを含めて全国で9か所のみとなっています(2015年3月時点)。低濃度PCB廃棄物については、その量に対して処理設備の数が少なく、まだまだ処理が追いついていない状態です。
苫小牧ケミカルの完全無害化処理と、安全対策
ダイオキシンを発生させない、完全無害化処理
柱上トランス、ドラム缶等の低濃度PCB廃棄物を、(1)固定床炉でPCBを加熱分離。続いて(2)二次燃焼炉で絶縁油およびガス化したPCBを850℃以上で燃焼し分解します。燃焼される低濃度PCB廃油は、同時に二次燃焼炉の燃料としての役割も果たしており、エネルギーの有効利用による燃料コストの削減につながっています。排ガスは(3)急冷塔で一気に200℃以下まで冷却することにより、ダイオキシン類の再合成を抑制します。さらに(4)バグフィルタでダイオキシン類等の有害物質を除去し、無害化された気体として煙突から放出されます。
固定床炉で無害化した柱上トランス等の筺体は、銅、鉄、アルミ等にリサイクルされます。銅はJX金属グループ内のパンパシフィック・カッパー株式会社佐賀関製錬所でリサイクルを行っています。
徹底した安全対策
低濃度PCB廃棄物処理施設の周囲への側溝の設置による外部への漏洩防止、廃棄物屋内貯蔵所の床への不浸透性の素材の使用による地下浸透の防止など、廃棄物の保管、処理にあたって万全の安全対策を施しています。
また、火災・地震・停電等が発生した時の対応もマニュアル化され、緊急事態への対応も万全を期しています。
低濃度PCB廃棄物 完全無害化処理フロー
処理が可能な低濃度PCB汚染電気機器などの種類
- 絶縁油、熱媒体油、副生成油、潤滑油、洗浄油など
- トランス類 変圧器、リアクトル、変成器、変流器、電圧調整器、放電コイル、整流器、開閉器、遮断機、中性点抵抗器など
- コンデンサ類(15年度中追加取得予定)
- 金属くず ドラム缶、ペール缶、一斗缶(低濃度PCB含有廃油を保管していた容器)など
- 塗料付着金属くず(塗料の中に低濃度PCBが含まれるもの)(15年度中追加取得予定)
受け入れ可能なサイズ
幅:2.5m 奥行:1.5m 高さ:2.3m
- ※北海道庁との事前協議等の手続きは必要ありません。